過去ログ - 美琴「極光の海に消えたあいつを追って」2
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849: ◆nW2JZrx2Lo[saga]
2012/02/21(火) 04:10:34.67 ID:FWHujRcko

 ガラン、ガシャンという鉄材が触れ合う音が、試験場内部に響いた。
浮遊するブロックの上から見下ろす美琴の眼下では、『業火焔弾』のいた場所に鉄材の山が出来ている。

死なないように手加減はした。
鉄材の下敷きにはなれど、決して致命的な怪我はせぬように緻密な操作を加えていたのだ。
だが、

(……逃げられた?)

 『業火焔弾』を死なせぬように、落下場所にわざと作った空白地点にその姿はない。
中途半端に逃げ回り、鉄材の下敷きになってしまったのだろうか。

そんな予想を覆すように、美琴の電磁波レーダーに引っかかる影が複数。

「…………あっ!?」

 思わず電撃で迎撃してしまったあとにその正体を見て、自らの失策を悟る。
彼女が破壊してしまったのは火薬の詰まったパッケージ。電撃を受けて粉砕され、盛大にその中身を撒き散らす。

「あーっはっはっはっはっ!! かかった、引っかかった!」

 哄笑の元を見てみれば、そこには『業火焔弾』の姿があった。
いかなる手段を用いて逃れたかは知らないが、無事ではなかったらしい。
片腕はだらりとぶら下がり、額からは血が流れている。
だがそんなことは関係ないと言わんばかりの勢いで、上方に浮かぶ美琴を睨みつけていた。

上方に向けた彼女の無事な方の手の中に火球が生まれた。
それは今まで放っていたものの大きさを越え、周囲の酸素を喰らい尽くし、発火点を越えた塵を焼き尽くしながらどんどんと膨れ上がっていく。

「これだけの大きさと熱量があれば、火球が近づくだけであんたの周囲を漂う火薬に引火し大爆発を起こす!
 頼みの綱の砂鉄は水飴みたいになって床材にへばりついてやがる。
 もう逃げ場はないよ、超電磁砲!」

 暴力的なまでの高熱を乗せた目も眩むほど眩い光に、火球そのものに触れていないにも関わらず周囲のあらゆるものが焦げ付き始める。
彼女の能力名『業火焔弾(メテオライト)』に相応しい、まるで隕石のような巨大さと熱量を持つほどに成長したそれを、さらに空間を埋め尽くさんばかりに膨らませる。


腕で熱気を防ぎながら、美琴は下方を見下ろす。
視界を白熱させるような火球の輝きに阻まれて、彼女の位置からでは『業火焔弾』の姿は見えない。
彼女の位置からならば。

相手の意識は完全に自分に向き、しかも能力を使うために足を止めている。
最高のタイミングだ。というよりも、これ以上は持たない可能性も出てくる。
だからこそ、美琴は信頼するパートナーの名を叫ぶ。


     「──黒子っ!!」



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