過去ログ - 番外・とある星座の偽善使い(フォックスワード)
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847:作者 ◆K.en6VW1nc[saga]
2011/09/17(土) 21:14:38.59 ID:W55C2CfAO
〜11〜

盗んだバイクもとい、盗んだバンで走り出す。
ぶっちゃけて言えば女の子を後ろに乗せて走りたかった。チャリでもバイクでもなんでも。
幹線道路を直走りながら図らずも叶ってしまった幻想(ゆめ)は間を持たせるためのタバコの苦い味がした。
表の世界で叶わなかった夢が裏の社会で叶ったなんて思うと少しやりきれない気持ちになる。

滝壺『………………』

浜面『(き、気まずいぜ……)』

助手席に乗り込んだピンク色のジャージの女の子、滝壺は車酔いでもしたように黙り込んでいた。
なんてこったい。と思いながらウインカーを左に切る。これってドライブって呼んでいいもん?

滝壺『はまづら』

浜面『お、おう』

滝壺『さっきの話だけどね』

浜面『………………』

滝壺『10月3日の夜と10月4日の朝から、私はずっとはまづらが気になってた』

飲み込んだ唾が、呑み込んだ煙と一緒に落ちて行く。
秋空が妙に晴れがましいのに物寂しい。そう感じるのは――
隣にいる滝壺の儚さか、それとも色々あった俺の心境の変化か。

滝壺『とっても強くて、すっごく弱くて、ちょっと怖そうで、それでも寂しそうなはまづらの事が……ずっと』

浜面『……そうか』

滝壺『うん。はまづらとは初めて会ったはずなのに、私はなんだかずっと前からはまづらを知っていたような気がしてた』

お、落ち着け浜面仕上……本能のアクセルと理性のブレーキを踏み間違えるな。
心のシートベルトと魂のエアバッグの貯蔵は十分か?大丈夫だ問題ない。
ドキドキすんじゃねえ。信号見ろ。車間距離開けろ。
ルームミラー見てもいつもの俺だイケメンにはなれねえから落ち着けHAMADURA

浜面『ど、どうしてなんだ?俺と滝壺はあの夜の前まで会った事なんて――』

滝壺『……鏡』

浜面『!?』

滝壺『はまづらは、私と同じ目をしてる』

その言葉に俺はナビ画面に走るノイズのような気持ちが胸を騒がせるのを感じた。
それは不愉快だとか恋愛感情的な意味じゃなくって……
あれだ、ズレたチューニングを元のツマミに戻して音を作る時みてえな――



滝壺『――私と同じ、居場所を探してる人の目をしてた――』



……あーちくしょう……俺は、俺達どこに向かって走ってるんだ?






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