107:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2011/09/05(月) 01:01:10.86 ID:wbDVTs5Go
それでも、と彼は思った。
それでもやっていくしかない。もう、子供ではないのだから。
ぼんやりとした頭で過去を振り返っていると、不意にムラサキの顔が浮かんだ。
一度も話したことがないと思っていた。でも、記憶を辿るとたしかに話したことがある。
何を話したのかは思い出せない。入学し始めたころ、まだ新しい友達もできていなかった時期に、彼女と言葉を交わしたことがある。
内容はまるで思い出せなかったが、そのとき彼女がどんな表情をしていたかは克明に思い出せた。
微笑んでいたのだ。まだ初対面の緊張が抜けないながらも、強張りながらも、彼女は微笑していた。
なぜ忘れていたのだろうと彼は思った。あるいは、その後に続く生活が、あまりに期待にそぐわなかったからだ。
なんの努力もしなかった自分を棚に上げて、なぜ身勝手な期待ばかりをしていたのだろう。
彼は考えることがいやになって眠ろうとした。不思議なことに睡魔はすぐに訪れて、彼を眠りの世界に導いていく。
ぼんやりとした思考が、最近会ったばかりの人物たちの映像を映していく。
アキラ、ミシマ。ともだち。
ムラサキ、ハルノ。縁の無かった女子たち。
ヤマト。
……ヤマト?
ヤマトは、彼にとってなんなのだろう。
小学校からの付き合いで、仲がいいとは言えないが、そこそこ話もした。
132Res/141.53 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。