13:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2011/08/28(日) 18:07:42.17 ID:vDKXf2v5o
  
  とにかく彼の頭の中は、ごちゃごちゃと混沌としていて、理路整然としたものがひとつたりともなかった。 
  不意にこれまでの人生を振り返ると、彼は言葉を失う。自分はなにひとつ、自分ひとりで決めたものを持たなかった。 
  高校の進学も周囲がそうするから、そうするのが普通だからという理由でしかなかったし、高校も深く考えずに近い場所を選んだ。 
  
  自分が入れそうだから、という理由で。事実、それは当たりで、ろくに勉強せずに、そこそこの高校に入ることができた。 
  このことが、彼の自意識を肥大させ、過剰な自信とプライドを作り、社会生活に戻ろうというやる気を削ぎ落としたのは言うまでもない。 
  
  とにかく彼は、毎日を必死に消化し続けた。いろいろなことを考えた。青臭い似非哲学に、何度も思考を委ねた。 
   
  一年目の冬、彼は服毒自殺を試みた。なんだかすべてが空しくなったのだ。 
  いつか死ぬならば、今死ぬのでも大差ない。そう考えた彼は、持病の発作を押さえるナントカという薬を九錠飲んだ。 
  自分でも不思議だが、そのときだけは鍵を開けていた。そうすることで、彼はどうにか一命を取り留めた。 
  
  目を覚ましたときの景色はぼんやりとしていて、ひどく曖昧だった。いつ意識が戻ったのかも、よく分からなかった。 
  いつのまにか目を覚ましていて、いつのまにか意識がはっきりしていた。最初に目にしたのは医者の顔だった。 
  
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