26:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2011/08/28(日) 19:36:42.67 ID:vDKXf2v5o
秋が終わり、冬がやってきた頃、彼は何もかもをやめてしまおうかと思った。このまま引き籠もりの生活を続けるのも悪くない。半ば開き直るようにそう思った。
彼の心がどう動こうと、客観的に見れば、二年前も今も変わらない。同じような行動しかしていない。ただ無為に日々を過ごしているだけだ。
それを変えようとするのにも疲れてしまった。一度立ち止まってから、再び歩き出すのには、ただ歩き続けるよりも強い勇気が必要だった。
ある日、彼の心境はまったく予兆もなく唐突に変わった。それというのも、自分が十八歳だということを思い出したからだ。
もう自動車免許を取得できる年齢だ。どうせ生きているなら、取った方がいい。その考えを両親に告げると、すぐに認めてもらえた。
姉が通っていた自動車学校は、車で十分程度のところにあった。親と職員が勝手に手続きを進めるのを聞きながら、周囲を見回す。
少し後悔しているのは、思い立ったのが冬だったということだ。十二月の半ばには、同じ歳の高校生たちが大勢で話をしていた。
とにかく、来た以上は免許を取ってやろうと彼は意気込んだ。誰にだって取れるものだし、誰にだって出来ることだ。
才能は必要とされない。ちょっとした努力と、あとは慣れの問題だ。引き籠もりにだって出来る。
緊張しなかったわけではないが、彼は逃げ出す気にはなれなかった。怖くなくなったのではない。むしろその逆だった。
また逃げ出してしまえば、もう後はない、と考えたのだ。ここでまで逃げ出してしまえば、自分はもう何にも立ち向かえなくなってしまうだろう。
それだけは、想像するだけでも恐ろしいことだった。
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