過去ログ - 紬「メンヘラ」
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14: ◆3/LiqBy2CQ[sage]
2011/09/15(木) 20:09:38.16 ID:+wTNpPwyo


――少し久しぶりに会社に顔を出す。そんな私を出迎えてくれたのは陰口だった。
給料こそ僅かなものの、次期社長と結婚し、決められた仕事も定時も存在しない私はやはり恵まれた立場に映るようで。まぁ仕方のないことだと割り切ってはいるけれど。

紬「何かお手伝いしましょうか?」

社員「え!? うーん……いえ、今は特には…」

紬「そうですか。何かあったら言ってくださいね」

明らかに忙しそうな人に声をかけたのだけれど、何を手伝わせてくれない。
実のところ、陰口よりもこういう明らかな気遣い、というか腫れ物扱いのほうが堪える。敵意なら無視すれば済むけれど、善意が僅かでも含まれているならそれは受け止めないといけないから。
遠慮、あるいは気遣いという名の善意が。そして、その善意は、私に一つの疑惑を常にもたらす。
そう、自分は居るだけで邪魔な存在なのじゃないか、という疑惑を。ほぼ現実と言える疑惑を。

結局のところ、会社では彼の隣しか居る場所がない。彼の隣で愛想笑いを貼り付けているしか出来ないのだ。
お茶を淹れれば喜んでもらえるのだけは、少し昔を思い出して嬉しくもなるけれど。でもその後に寂しさも襲ってくるから結局差し引きゼロか。

……こんな会社の何が楽しいと言えるのか。何か一つでも精神的に利となる点があるというのなら、誰か教えて欲しい。


――そして彼より一歩先に会社を出て、家に帰って夕食の準備。彼が帰宅したら夕食、入浴、そして性交渉の後に彼が就寝したのを見計らって手首を切る。

……こんな毎日の何が楽しいと言えるのか。何か一つでも精神的に利となる点があるというのなら、誰か教えて欲しい。
切実に請う。誰か教えて。お願いだから。


――結局、前回会ってから丸一日空いただけで、私は再度唯ちゃんに縋っていた。



紬「――唯ちゃんと一緒に居る時が楽しすぎるから、何もない日常に戻った時の落差で、余計に落ち込んじゃうのかな」

多分、それで間違いないだろう。心の針が振れる事がなければ何も感じないはずだ。振れ幅が大きすぎるから余計に心に響くのだ。
けれど、そんな結論を出したところで、

唯「……だったら、会わないようにする?」

紬「それは嫌っ!!」

唯「ひゃっ!?」

……その選択肢だけは、絶対にありえない。

紬「唯ちゃんは、さっき頼んだパフェが勝手にキャンセルされたら怒るでしょ? 落ち込むでしょ?」

唯「う、うん。それは勿論……」

ちなみに現在地はファミレス。一人では入りづらく、彼ともあまり休日が合わない為しばらく来てなかったけど、せっかくだからと今日唯ちゃんを誘ってみた次第。

紬「私にとって唯ちゃんと会う時間は、パフェ以上のものなの。あったかくて心地よくて、唯一無二の癒しの時間なの!」

唯「う、うん、なんか……照れる…」

ごめんね、そういう表情も含めて癒されるの。…なんちゃって。あながち嘘でもないけど。
唯ちゃんを困らせる趣味はないけれど、その表情と、左手首につけられたリストバンドを見て顔が綻ぶ程度には、私はまだ唯ちゃんの事が好きなの。
……なんちゃって。こっちのほうは嘘じゃないといけない。
私が唯ちゃんに求めているのは醜い現実の中のささやかな幸せであって、現実からの逃避とか否定とか、そういう大きな幸せじゃないんだから。

唯「まぁ…その、前にも言ったけど、私で助けになれるなら、いつでも呼んでね」

紬「出来れば余裕を持って?」

唯「うん。絶対に応えられる、なんて無責任なことは言えないけど…ムギちゃんのためなら、絶対に努力はするから」

紬「……うん、ありがとう、本当に…」

その言葉は、確かに嬉しくて、何よりも私を安堵させてくれる素敵なものだったんだけれど。
どこか心の奥で、もっと昔に聞いておきたかったな、と思う自分もいた。




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