過去ログ - アイリス「さよなら、ジャンポール」
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26:ny[saga]
2011/10/21(金) 19:17:23.50 ID:sT9PuPCN0
「アイリスが消えるのが……いいんだよね?
みんなのためにも、そうするのが一番……いいんだよね?」

感じ取っていたのだろう。
自分がどうするべきなのかも分かるのだろう。
そして、分かってしまったから。
分かってしまったから……、アイリスが取る行動は一つなのだ。
人格統合。
自分が消えてしまう事は分かっている。
けれども、

「アイリスがこのままだったら、いけないんだもんね……。
もしも、もういっかい『ポルナレフ』がでてきたら、きっとお兄ちゃんにひどいことしちゃうよ……。
みんなもひどいことされちゃう。レニも、お兄ちゃんも、みんな、みんな……!」

誰よりも泣き虫なくせに、布団のシーツを握って、

「だから、アイリス、消えるよ……。
『ポルナレフ』といっしょに……、もとのアイリスにもどる……」

 身体が震えても、抑えて、唇が震えても、噛み締めて、

「アイリスは……それをえらぶよ……。お兄ちゃん……」

必死で言う。泣きそうな表情のくせして、気丈に言葉を吐き出す。
アイリスはそういう子。そういう優し過ぎる子なのだった。
大神の瞳が涙に支配されそうになる。
駄目だ、出てくるな!
アイリスが必死に堪えているのに、恋人の自分が泣いてどうするんだ!
だのに、大神は溢れそうになる涙を、堪える事が出来ない。
涙などに負けてたまるか。
確かに泣きたい時は泣くべきなのだろう。
だが、今泣くべきは自分ではない。自分ではないのだ。

「あっ、あははっ……。お兄ちゃん、ないてる……」

必死の笑顔で微笑むアイリス。
胸がひどく痛い。
だが、泣いてはならないのだ。自分は涙に負けてはならない。
何とか言葉を出そうとするが、大神は何も言えない。
それでも、大神はアイリスを正面から力強く抱いた。
温もりを伝えてやりたかった。
温もりを感じたかった。

「お……お兄ちゃ……。はずかしいよお……」

結局、大神は溢れ出そうな涙には勝てなかった。
しかし、これだけは言える。

「アイ…リス……、いいんだ。アイリスこそ我慢するな。
泣きたい時は泣いていいんだ……。
今泣かなくて……、どうするんだ。
本当に辛い時は……泣いてもいいんだよ……!」

どうにか搾り出した。伝えなくてはならない言葉を、とにかく搾り出した。
そう。これだけは言える。
結局、大神は溢れ出そうな涙には勝てなかった。
しかし、負けもしなかった、と。
大神の腕の中で、アイリスが小刻みに震え始める。震えた声で言う。

「ずるいよぉ……お兄ちゃん……。
アイリス……、アイリス……がまんしてたのに、がんばってがまんしてたのに……。
そんなこといわれちゃったら……、ないちゃうよぉ……。
とまらなくなっちゃうよぉ……」

「いいんだ。泣いていいんだ……!」

 途端、アイリスがしゃくりだす。止まらず、しゃくり上げる。

「う……う……うう……。
うわあああああああああああああああああああっ!」

大声で泣き始める。
部屋中をアイリスの号泣の声が包んだ。
ずっと、大神はアイリスを抱き締めていた。
涙に負けず、胸が悲鳴を上げても、アイリスが温もりを忘れないように。
自分がアイリスの温もりを忘れないように、ずっと、ずっと、抱き締めていた。


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