16:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2011/10/22(土) 00:06:57.46 ID:CGXDMCHp0
「日本に自殺病が蔓延するようになって、もう十年ほど経ちますが、一向にその数は減らない。むしろ増え続けています。そして、娘さんもその一人になりかかっています」
資料をデスクの上に放って、彼は椅子に腰掛けた。
「どうなさいますか?」
穏やかに問いかけられ、母親は血相を変えて叫んだ。
「どうって……ここは病院でしょう? 娘を助けてください!」
「それは、どのような意味合いで?」
淡々と返され、母親は勢いをそがれ一瞬静止した。
「意味合い……?」
「娘さんを元通りに戻すのは、無理です。自殺病第五段階四日目の生存確率は、およそ十パーセントほどと言われています。生かすことも困難な状況で、はいできましたと、魔術師のように娘さんを戻すことは不可能です」
「それじゃ……」
「しかし」
一旦そこで言葉を切って、圭介は眼鏡を中指でクイッと上げた。
「私どもは、その十パーセントを百パーセントにすることだけは可能です」
「どういう……ことですか?」
「命のみは保障しましょう。命のみは」
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