515: ◆tUNoJq4Lwk[saga]
2012/01/06(金) 19:39:02.65 ID:9e1wVLifo
「迷いだらけじゃねえか」
「迷い?」
「お前の線だよ。お前、何のために漫画を描いてる」
「それは……、描きたいから――」
「ウソだな」
播磨の言葉を遮るように五島は言い切った。
「な、なに?」
「お前は自分から逃げるために漫画を描いてる。わかるんだよ、長いことこの仕事やってりゃ」
「そ、そんな。俺はただ……」
「言っとくがな、漫画に慰められていいのは読者だけだ。作家がそんな行為をしちゃいけねえ」
「……」
「自分で楽しむためだけに描くんだったら別にかまわねえよ。だが、そうじゃねえだろう」
「それは……」
「人様に読んでもらうんだったら、それなりの覚悟が必要だ。プロとしてやっていくなら、なおさらだ」
「覚悟……?」
「いいか、播磨。いくら絵がうまくても、話がうまくできていても、作家が自分自身と向き合ってなきゃ
いい作品はできねえ。今のお前にはそれがない。ただ、機械的に筆を動かしてるだけだ」
「……」
「ここに持ち込みたけりゃ、ケジメをつけてから来い。迷いを抱えた状態で絵を描くのは漫画に対する冒涜だ」
「冒涜……」
「そう、冒涜。わかったか」
「ん……、はい」
播磨は唇を噛む。
そして突き返された原稿を手に、彼は談講社を後にするのだった。
*
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