5:JK[saga]
2011/12/14(水) 02:40:25.77 ID:7vHzEqmB0
「お月さん?」
『逆に問おう。
雪には好意に値する男は存在するのか?』
「え……?」
『私には好意という感情が理解出来ない。
故に雪に指導を願いたい』
「あたしの……好きな人かぁ……」
雪は不意に遠くを見つめた。
何かを思案しているのであろう。
僅かな沈黙の後、雪は微笑んで言った。
「あたしだって好きな人はいるよ?
……面と向かっては、言えないけどね」
『左様か。
人間は好意を正直に表現出来ない生物らしい。
雪もそうなのか』
「うん……。
まあ、確かにそうなんだけどね。
あたしはどちらかと言えば、自分から相手に好きだって言う方だよ?」
『ならば、何故だ』
突然、雪は長椅子から立ち上がった。
その場で伸びをし、微笑が崩れ、
少々悲哀に暮れている眼光で月夜叉を見つめた。
「哀しませたく、ないから」
『何故、哀しむ。
好意を他人に持たれる事は、人の子には喜ばしい事なのだろう』
「あたしだって好きだって言いたいよ?
でも、駄目なの。あたしは多分駄目なの」
「何故だ」
「……お月さんと初めて逢ったのは、二ヶ月前だったよね?」
突然話題を変えられてしまったが、月夜叉はそれを気にしなかった。
彼女の意思を尊重し、頷く。
『左様だ。
雪がこの長椅子にて、涙していた」
「あの日ね……。
あたし、好きな人に逢いたかったの。
告白しようとも思ってた。傍に居てほしかったの。
でも、出来なかった」
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