269:>>1 ◆eu7WYD9S2g[saga]
2012/01/14(土) 22:11:56.14 ID:TikXGamK0
過去を顧みている間に、立場はいつの間にやら逆転していた。
気が付けば美琴は七月二十日と同様、頭をインデックスに抱きかかえられている。
後ろ髪を梳くか細い五指の感触は、ハープ弾きのような繊細さと優美さに溢れていた。
270:>>1 ◆eu7WYD9S2g[saga]
2012/01/14(土) 22:13:29.13 ID:TikXGamK0
美琴の勝利は世界のどこかで泣き濡れる幾千人の敗者の誕生を意味していた。
泣いた少女の中には美琴の大事な大事な『妹達』もいたはずだ。
そしてインデックスも、その一人になった。
271:>>1 ◆eu7WYD9S2g[saga]
2012/01/14(土) 22:14:44.15 ID:TikXGamK0
「……辛いことがあったら、誰かに相談するのよ? もう、溜めこんじゃダメよ?」
272:>>1 ◆eu7WYD9S2g[saga]
2012/01/14(土) 22:16:18.41 ID:TikXGamK0
図星を見事つついてやったようだった。
日本を発つ前夜深酒に付き合わされた、中学時代からの親友の顔を思い浮かべながら、
美琴はインデックスの胸に埋めた顔をようやく持ち上げ、いたずらっぽく笑う。
273:>>1 ◆eu7WYD9S2g[saga]
2012/01/14(土) 22:18:09.96 ID:TikXGamK0
清楚な修道服を娼婦のドレスよりなお淫靡なコスチュームへと昇華させる、
着衣の内側で窮屈そうに上下する双球。
美琴が芋虫さながらの粘っこさで長い指を這わせると、躍動する母性が瑞々しく弾けて
手のひらを押し返してくる。
274:>>1 ◆eu7WYD9S2g[saga]
2012/01/14(土) 22:19:39.59 ID:TikXGamK0
般若のごとく歪んだ表情をふるふるひくつかせながら、番犬は右手で背中側に聖女を庇った。
残る左腕で美琴の肩につっかえ棒をして、守護すべき光を汚らわしい色情魔から遠ざける。
275:>>1 ◆eu7WYD9S2g[saga]
2012/01/14(土) 22:21:03.96 ID:TikXGamK0
言って美琴は、活発な美貌を斜めに傾けて挑発的に笑う。
「……ちっ。おい、上条美琴」
276:>>1 ◆eu7WYD9S2g[saga]
2012/01/14(土) 22:22:31.06 ID:TikXGamK0
「ふっ、ふふ、あはははは!! アンタの独占欲ってもんを確認できただけでも、
十分に価値ある二〇分だったわね…………ねぇ、ステイル」
「なんだい」
277:>>1 ◆eu7WYD9S2g[saga]
2012/01/14(土) 22:23:34.31 ID:TikXGamK0
軽口で応じるステイルの表情はしかし、真剣そのものだった。
鬼をも怯ませかねない鬼神の形相をふっと美琴は引っ込める。
やはり、この男に任せておけば安心だ。
278:>>1 ◆eu7WYD9S2g[saga]
2012/01/14(土) 22:25:35.53 ID:TikXGamK0
視線を下ろすと、湿気を帯びてかすかに潤んだ二つの翠玉が美琴を見上げてきた。
「わた、私も、みことが大好きだから。だから、もしもとうまに泣かされたらすぐ教えて
279:>>1 ◆eu7WYD9S2g[saga]
2012/01/14(土) 22:26:54.96 ID:TikXGamK0
それは美琴が決して敗者に求めてはならない慰めの言葉だった。
そして、もっとも心の奥底で渇望していた救いの言葉でもあった。
どれほどに正当化したところで、御坂美琴が掠奪者である事実に変わりはない。
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