過去ログ - 律「閉ざされた世界」
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642:にゃんこ[saga]
2012/06/30(土) 17:59:02.47 ID:zmR1v/Ro0
私は苦笑しながら、頬を膨らませる唯に弁明してやる。


「私だって京都好きだぞ?
でも、ちょっと困ったなーって思ってさ。
ライブやる前、競走で最下位になったの私だろ?
だから、今日はハンバーグでも作ろうかと思ってたんだけど、
いきなり京都なんかに飛ばされちゃ、流石に今日のハンバーグは無理だな……」


「ええー……。りっちゃんのハンバーグ楽しみにしてたのにー……」


「仕方ないだろ、まず調理器具集める所から始めなきゃいけないんだから。
大体、今日の寝床も探さなきゃいけないわけだし……。
明日なら作れると思うから、今日は我慢してくれよ」


「うー……、残念だなあ……。
でも、そうだねー……、泊まれる所から探さなきゃいけないもんねー……」


唯と二人で肩を落として苦笑し合う。
大変な事は大変だけど、まだ五人で居られるだけマシだった。
もうすぐ離れ離れにさせられてしまうかもしれないけど、
それまでは五人で協力して元の世界に戻る方法を探していければいいと思う。
過去や現在や未来や、色んな物を胸に抱えて、背負って行きながら……。


「んじゃ、まずはカチューシャ探さなきゃなー……。
ライブも終わったわけだし、そろそろ前髪上げさせてくれ。
これ以上、このおかしー髪型で居させるのは勘弁してほしいしな……」


「あ、ちょっと待ってくれ、律」


言って、私が前髪を上げようとすると、急に澪に止められた。
何故か嬉しそうに笑ってるから、
馬鹿にされてるんだろうかって思ったけど、そうじゃないみたいだった。
澪はレジャーシートの端に置いてあるギターケースの方に歩いて行くと、
腰を下ろして「よかった、あった」と言いながら何枚かの紙切れを取り出した。
レジャーシートの上に置いていたから、ギターケースも転移させられてたんだろう。
いや、それはともかくとして。
澪はその紙切れを手元で二冊に分けると、私と梓に手渡した。
とりあえず、その紙切れに視線を落としてみる。


「『風に乗って流れる私達の今は』……。
おい、これって……」


「新曲だよ、新曲。
律達に聴かせようと思いながら、ずっと聴かせられなかったからな。
今日こそ今から演奏したいんだよ。別にいいだろ、律?」


「いや、それは別に構わないんだけどさ……、
つーか、普通、楽譜渡すのって私達に曲聴かせた後だろ。
いきなりネタバレってどういう事だよ……」


「いやいや、よく見てくれよ、律。
その楽譜はドラムの楽譜なんだぞ?」


「……あっ! 本当じゃんか!
おまえ達、ドラム専門じゃないってのに……」


そう呟きながら、私は心の何処かで納得していた。
澪達が新曲を作曲してるのは知ってたけど、
それにしたって作曲に時間を掛け過ぎじゃないか、って思ってたんだよな。
何でそんなに時間が掛かってるんだろうって疑問に思ってたんだけど、今その疑問が解けた。
簡単な答えだ。私達が居ないのに私達のパートまで作曲していたからなんだ。
特に梓のパートはともかく、私無しでドラムのパートまで考えるのはそりゃ手間が掛かった事だろう。
私と梓の事まで考えてくれていたのは嬉しい。
嬉しいんだが、うん、ちょっと待て……。


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