過去ログ - 文才ないけど小説かく(実験)
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583:ハーミッツ・ジャムをパンに塗って(お題:珈琲と泥水の違い)1/11[sage]
2012/07/03(火) 19:44:53.75 ID:FW9rMRg6o
 ●昔々あるところに――いったいどこに、ですって? そう、でもこれは、どこにだって起
こったことかもしれないのです――ひとりの旅人が旅をしていました。あるときは砂漠、また
あるときは森、あるときは山へ宝石を探すために旅をしていました。

 ある日旅人は、雨が降り続く街にたどり着きました。そこで、水浴びをしている娘と出会い
以下略



584:ハーミッツ・ジャムをパンに塗って(お題:珈琲と泥水の違い)2/11[sage]
2012/07/03(火) 19:47:18.14 ID:FW9rMRg6o
 ¶

 ここまで文章を書きあげて、私はノートパソコンのモニターをそっと閉じる。そして、眉間
を揉みほぐした。それでも体にのしかかる疲れが和らぐ様子はなかったので、背伸びをして肩
をゆっくりと回した。壁掛け時計に視線をやると、時刻は夜の九時半だった。蝉の泣き声が、
以下略



585:ハーミッツ・ジャムをパンに塗って(お題:珈琲と泥水の違い)3/11[sage]
2012/07/03(火) 19:48:25.73 ID:FW9rMRg6o
 半年前、採用されて新しい仲間となった私のために、彼らが開いてくれたお楽しみ会で披露
してくれた『おおきなかぶ』は、今でも瞼の裏に焼き付いている。
 そして、舞台で犬役を必死に演じる美亜の姿に、私は心を奪われたのだ。
 もう一度、茶色い歩道に目を向ける。
 無人だった歩道に、人影が現れた。
以下略



586:ハーミッツ・ジャムをパンに塗って(お題:珈琲と泥水の違い)4/11[sage]
2012/07/03(火) 19:50:17.16 ID:FW9rMRg6o
 私は缶コーヒーを受け取って、美亜の手を握る。美亜の手のひらは理由はわからないがベタ
ベタだった。
 缶コーヒーのプルタブを上げて、一息で飲む。出来るだけ美味しそうなに、嬉しそうな表情
を浮かべ、彼女に見せる。コーヒーの味は、クセが強かったが、甘くて美味しかった。きっと、
飲んでいる私を一生懸命に応援している美亜が、コーヒーの味を変えてしまったのだろう。
以下略



587:ハーミッツ・ジャムをパンに塗って(お題:珈琲と泥水の違い)5/11[sage]
2012/07/03(火) 19:51:49.66 ID:FW9rMRg6o
 高価な椅子に深々と座っている友人は、嘲笑を隠さず、くつくつと声をあげた。彼が摘んで
いるコーヒーカップが上下に揺れるほどの、押し[ピーーー]ことのできない笑いだ。まるで、そんな
可笑しいことがあるか? とでも言っている様子だった。
「お前は憧れているだけさ」
「何に、だ」
以下略



588:ハーミッツ・ジャムをパンに塗って(お題:珈琲と泥水の違い)6/11[sage]
2012/07/03(火) 19:52:49.71 ID:FW9rMRg6o
 あれ以来、私は彼と連絡をとっていない。彼が今、どこで何をしているのかは知らないし、
知りたくもない。

 ¶

以下略



589:ハーミッツ・ジャムをパンに塗って(お題:珈琲と泥水の違い)7/11[sage]
2012/07/03(火) 19:54:33.59 ID:FW9rMRg6o
「うーん……旅人は言われた通りに洞窟に向かうんだ。洞窟を覗くと、大きな蜘蛛と小さな蜘
蛛がいた。二匹は糸を張って、ベッドを作ってその上に寝ていたんだ。よぅく目を凝らすと、
二匹のその奥に光輝く何かがあった」
 美亜は土いじりを止めて、頷きなから私を見上げた。どうやら話を真剣に聞く姿勢になった
ようだ。
以下略



590:ハーミッツ・ジャムをパンに塗って(お題:珈琲と泥水の違い)8/11[sage]
2012/07/03(火) 19:55:42.31 ID:FW9rMRg6o
「や!」
 美亜は、こーちゃんにいきなり抱きしめられて不快感を露にしている。
 私は手を大きく叩き、こーちゃんの注意をむけるように仕向けた。しかし、彼は美亜を抱き
しめたまま右へ左へ体を揺さぶるだけで、いつまでたっても止めようとはしない。
 仕方なく力づくで彼を美亜から引きはがした。そして、彼を抱きしめる。
以下略



591:ハーミッツ・ジャムをパンに塗って(お題:珈琲と泥水の違い)9/11[sage]
2012/07/03(火) 19:56:51.29 ID:FW9rMRg6o
 小野さんは、はっは、といつものように笑った。横目で小野さんを覗くと、彼は脂汗で濡れ
ている鼻先を掻いていた。
「昨日の夜、美亜と何をしていたんですか?」
 さっきの私と同じように、小野さんは陽炎で揺れている街並に目を向ける。
「幸祐君から聞きました。正門の前の木の下で、あなたと美亜が抱きついて激しく動いていたと」
以下略



592:ハーミッツ・ジャムをパンに塗って(お題:珈琲と泥水の違い)10/11[sage]
2012/07/03(火) 19:58:23.59 ID:FW9rMRg6o
「それに、相手は障がい者です。分かっているんですか? いつも被害を受けるのは彼らなん
だ。あなたのような狡猾な人が、彼らから大事なものを搾取する。事が明るみに出たときには、
障がい者であるがゆえに悪者にされ、一般人の無理解が手に負えないレベルにまで進むのです」
 言い終わった後に、ポロシャツがべっちょりと濡れていることに気がついた。私は、何か重
要な思い違いをしている。ボタンのかけ違いをしていて、それに気づかないような、そんな感
以下略



593:ハーミッツ・ジャムをパンに塗って(お題:珈琲と泥水の違い)11/11[sage]
2012/07/03(火) 19:59:46.00 ID:FW9rMRg6o
 ●魔女を蜘蛛の糸でやっつけた後、旅人は王子様とお姫様のいる洞窟へ帰りました。お姫様
は喜びました。旅人はそうして光り輝く美しいものを手に入れました。旅人はお姫様にその美
しいものを差し出して、プロボースしました。お姫様は喜びました。
 旅人とお姫様は結婚して、その雨の降る国ですえながく暮らしました。この出来事がなくな
ってしまわないかぎり、ふたりはいまも生きていることでしょう。●
以下略



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