過去ログ - 文才ないけど小説かく(実験)
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724:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage]
2012/07/29(日) 22:48:28.08 ID:+2r4yTWH0
久々に参加しようかと思ってたけど、どうやら時間外コースだわ。


725:海に還る(お題:五百円) 0/8 ◆IL7pX10mvg[sage]
2012/07/29(日) 22:49:35.15 ID:EC3QnlO+o
25秒っぽいので引っかからないように8レス行きます


726:海に還る(お題:五百円) 1/8 ◆IL7pX10mvg[sage]
2012/07/29(日) 22:50:50.16 ID:EC3QnlO+o
「物理的質量は七グラム。内訳は銅が七十二パーセント、亜鉛二十パーセント、ニッケルが

八パーセント。デザインと材質に変更があったのが今から十二年前のこと」
「あれはデザインって言うの?」
「視覚的な変更ならデザインでいいじゃない。ちなみに、その変更は高額硬貨たる五百円玉
以下略



727:海に還る(お題:五百円) 2/8 ◆IL7pX10mvg[sage]
2012/07/29(日) 22:54:02.72 ID:EC3QnlO+o
 今回の目的地は海である。普段海にほとんど関係のない生活をしている僕にとっては、海
岸まで歩いて五分の駅に五百円以内で行けるという事実はなかなか驚異的なことだ。
「海は久しぶりだよね」
「そうだね、シーズンから半年以上経ってるわけだし」
「うん」
以下略



728:海に還る(お題:五百円) 3/8 ◆IL7pX10mvg[sage]
2012/07/29(日) 22:55:18.37 ID:EC3QnlO+o
「海だ」
 堤防が見えたあたりから潮の匂いと波の音がわずかにし始め、階段を上るとそれらが一気
に増した。暗くて分かり辛いが、水平線や波打ち際であろう線が見えている。否応無く気分
は高翌揚するが、もう真夜中と言っていい時間なので叫んだりはしないほうがいいだろう。そ
れでも彼女は、僕の肩に一旦手を置くと波打ち際まで一目散に走っていく。僕も負けじと後
以下略



729:海に還る(お題:五百円) 4/8 ◆IL7pX10mvg[sage]
2012/07/29(日) 22:56:32.34 ID:EC3QnlO+o
「花火やろっか」
 足を拭いて堤防まで上がってくるなり、彼女が言う。
「花火なんてあったの?」
「この時期の海っていえば花火くらいでしょう」
 それはその通りだが、僕としてはこの時期にどこから花火を仕入れたのかを知りたいとこ
以下略



730:海に還る(お題:五百円) 5/8 ◆IL7pX10mvg[sage]
2012/07/29(日) 22:57:51.77 ID:EC3QnlO+o
 ススキ花火も全て無くなり、残りは線香花火だけになった。去年も彼女と一緒に線香花火
をしたことはあったが、やはりと言うべきか、ここまで寂寥感に襲われることはなかった。
線香花火自体がもの悲しいイメージを持つものだからかもしれないが、終わりを強く意識さ
せられるとどうしても辛い。
「火、つけるよ」
以下略



731:海に還る(お題:五百円) 6/8 ◆IL7pX10mvg[sage]
2012/07/29(日) 22:59:16.81 ID:EC3QnlO+o
「ねえ」
 不意に彼女がライターを点けた。辺りはぱっとオレンジ色に照らされる。風にあおられて
火が消えそうになったが、彼女のまるい手がそれを遮った。背筋は丸まり、その火が無くな
れば一緒にいなくなってしまいそうなくらい、僕の目には頼りなく映った。
「楽しかったかな」
以下略



732:海に還る(お題:五百円) 7/8 ◆IL7pX10mvg[sage]
2012/07/29(日) 23:00:56.32 ID:EC3QnlO+o
「やっぱりまず謝らなくちゃね」
 落ち着いた声で、彼女は言う。
「これまで、私があれこれ振り回してきたこと、謝ります。ごめんなさい」
「そんなのいいのに」
「こうしないと、私の気が済まないの。自分勝手でごめんね」
以下略



733:海に還る(お題:五百円) 8/8 ◆IL7pX10mvg[sage]
2012/07/29(日) 23:02:22.69 ID:EC3QnlO+o
 いつの間にか空は白んでいた。線香花火も最後の一本ずつである。僕らは花火の先端を寄
せ合い、同時に火をつける。
「落ちないといいね」
 まったくその通りだ。海からの風も凪いでいて、今ならできる気がした。
 火の玉が無事に出来上がり、火花が散り始め、僕は少し安心した。しかし気は抜かない。
以下略



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