125:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/09(木) 19:54:54.20 ID:vAi26PND0
完全に、大人の大きさ……その羽だった。本来なら子供サイズの、小さな状態で芽吹いてそれが段々と大きくなる。しかし彼女はこれが始めて……つまり、十年以上の羽の成長を一時で行ったことになる。
しがみついている細い手が痙攣しているのを見て、ゼマルディは慌てて、外に出すために彼女を抱え上げようとした。しかしカランは、それを掴んで押し留めた。
時間にしておよそ三分ほど。しかし殆ど永遠とも思える時間を過ごし、カランは伸びきった羽骨から、ポタポタと肉の切れ端と血を垂れ流しながら、頭からゼマルディの胸の中に倒れこんだ。ぐったりしてか細い息を発している少女を抱いて、倍以上ものしっかりした体格の男は、途方に暮れて青くなっていた。
少し待つと、羽骨が噴出した部分の傷口が、まるで映像を高速で再生しているかのように音を立てて塞がり始めた。肉が固まり、骨の周りに寄り集まってカサブタとなっている。
カランは、泣いていた。
ゼマルディのマントを噛み締めたまま、押し殺した声でしゃっくりを上げ、ボロボロと大粒の涙をこぼしている。
979Res/589.08 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。