427:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/17(金) 17:23:46.04 ID:JYEl3aKe0
やがて少女は抱きしめられながらフッと微笑んで、そして言った。
「そうだねぇ」
「青いなぁ」
428:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/17(金) 17:24:21.67 ID:JYEl3aKe0
「いーや、兄弟は沢山いた方がいいに決まってらぁ。なんなら十人、二十人でも俺ァOKだ」
「私そんなに産まされたら死んじゃうよ」
「だいじょーぶだって。女の体ぁ、男よかぁよっぽど強く出来てんだ」
429:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/17(金) 17:24:53.50 ID:JYEl3aKe0
「で、家作ってさぁ」
「……」
「子供が結婚してさ……」
430:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/17(金) 17:25:25.37 ID:JYEl3aKe0
石を、小川の水が叩く澄んだ音がしていた。
カランの背中から伸びた長い骨羽が、水晶のような音を発していた。
「そうだね……」
431:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/17(金) 17:25:55.71 ID:JYEl3aKe0
「世の中って、楽しいぞ……」
「……」
「俺がこう思ってるように、お前がそう思ってるように、世の中には色んなことを思ってる奴らが無限にいるんだ。無限に沸いて来るんだ。そんな中では俺らなんざぁちっぽけなもんだし、苦しんで、辛くて泣き叫んでいたことなんて、ほんのチャチなものでしかねぇんだよ」
432:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/17(金) 17:26:30.88 ID:JYEl3aKe0
「俺のかーちゃんはさぁ」
「……」
「俺を産んで、俺が外に連れ出した。目も、耳も、足も、腕ももがれてさぁ。黒い一族のエサになるために、飼育されてさ」
433:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/17(金) 17:27:02.60 ID:JYEl3aKe0
ゼマルディの肩が、震えていた。
カランは黙り込んでしまった大男の背中をポン、ポンと母親のようにさすってやりながら、彼の胸に顔を擦りつけた。
「嬉しいよ……」
434:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/17(金) 17:27:31.72 ID:JYEl3aKe0
「……」
「確かにね、この世の中にはたくさんの人がいるかもしれないね……」
「……」
435:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/17(金) 17:28:00.09 ID:JYEl3aKe0
「……」
「あなたのお母さんも、そう言いたかったんだと思うなぁ」
「……」
436:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/17(金) 17:28:38.22 ID:JYEl3aKe0
「……」
「人が何より欲しいのは、そういうことなんだと……私は思うよ……」
「……」
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