433:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/17(金) 17:27:02.60 ID:JYEl3aKe0
ゼマルディの肩が、震えていた。
カランは黙り込んでしまった大男の背中をポン、ポンと母親のようにさすってやりながら、彼の胸に顔を擦りつけた。
「嬉しいよ……」
434:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/17(金) 17:27:31.72 ID:JYEl3aKe0
「……」
「確かにね、この世の中にはたくさんの人がいるかもしれないね……」
「……」
435:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/17(金) 17:28:00.09 ID:JYEl3aKe0
「……」
「あなたのお母さんも、そう言いたかったんだと思うなぁ」
「……」
436:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/17(金) 17:28:38.22 ID:JYEl3aKe0
「……」
「人が何より欲しいのは、そういうことなんだと……私は思うよ……」
「……」
437:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/17(金) 17:29:06.83 ID:JYEl3aKe0
「もっと、もっと幸せになろうね……」
それは、問いかけではなかった。
確認でもなかった。
それは、少女の。
438:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/17(金) 17:29:37.66 ID:JYEl3aKe0
「……」
「この私達の家で、二人だけは、ずっとずっと……ずっと、生きて……いこうよ?」
「……」
439:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/17(金) 17:30:05.34 ID:JYEl3aKe0
カランは、もう一度。
片手で腹を押さえ、もう片手でゼマルディの腰に手を回し、そして彼の胸に体を預けた。
「あぁ……」
440:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/17(金) 17:30:38.96 ID:JYEl3aKe0
*
怒鳴り声が聞こえた。
銃弾? 砲弾?
分からないが、飛び道具で射撃されたことだけは確かだった。奇跡的と言っては奇跡的に、その飛来した銃弾は、ゼマルディの剥がれかけていたウロコ――こめかみのひとつに突き刺さり、鉄のようなその表面を僅かに削っただけで脇にそれていた。
441:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/17(金) 17:31:17.60 ID:JYEl3aKe0
「少年の救助を優先! 第二射撃、用意!」
高く、澄んだ女性の声が拡声器を通じて周囲にこだました。血走った目をやっと上げた彼の目に、数十メートル離れた所に転がっているルケンに、多数の警備服というのだろうか。頑強なヘルメットとアーマードスーツ、つまり強化服をアンドロイドのように着た黒づくめの男たちが群がるのが見えた。
しかし視界が回っていて定まらない。
それほど、先ほどの射撃は正確で。
442:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/17(金) 17:31:49.91 ID:JYEl3aKe0
(何だ? 何だ何だ? ナンダ?)
対魔法使い用の、強襲弾だった。戦車の装甲でさえもへこませる威力を持つ、さながらロケット弾のような代物だ。意外と近距離で対象に命中させるのは難しいらしく、飛来したうちの大部分はゼマルディをそれ、脇に着弾し、鉛と鉄と、地面を砕いた破片を火花と共に撒き散らした。
そのうちの一弾が、折れ曲がっていた青年の腕……残っていた左腕に撃ち当たり、簡単に中ほどからを千切り弾け飛ばす。その勢いでゼマルディは、殆ど最後のウロコを撒き散らしながら空中に跳ね上げられ、また地面をバウンドして転がった。
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