538:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/19(日) 16:29:58.79 ID:PLPcklEN0
『…………』
追従しながら、ガゼルは言葉に詰まった。
虹の人格はよく把握していたはずだが、ここまで割り切っていた子だとは、思ってもいなかった。
539:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/19(日) 16:30:33.57 ID:PLPcklEN0
虹がボタンを操作すると、ガコン、と音がしてエレベーターが動き出した。
しばらく降り進む。
何段かの層になっているらしく、パイプ状のエレベーター通路の外は見えなくなっていた。
540:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/19(日) 16:31:06.24 ID:PLPcklEN0
『階下に生体反応。どうする?』
『殺す』
端的にそう言うと、虹はコートのフードを被り、ニマァ、と口を広げた。
541:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/19(日) 16:31:56.95 ID:PLPcklEN0
『あまり無駄な犠牲を出さないように』
『無駄な犠牲なんてこの世にないわ』
ガゼルに呟くように言い返し、虹はガコン、とエレベーターが止まり、扉が開くと同時に、走り出した。
542:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/19(日) 16:32:28.93 ID:PLPcklEN0
病み上がりとは思えない運動神経で、一筋の光のように虹が通り過ぎる。
それらが崩れ落ちるより先に、虹は顔面に浴びた返り血を舌で舐め取り、瞳をギラつかせながら走り続けた。
『ここの通路情報をハックした。さっきの人間牧場から採取した胎児を、加工するエリアみたいだ。無駄な殺戮はやめよう。もっと下るよ。エレベーターエリアは左だ』
543:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/19(日) 16:33:35.70 ID:PLPcklEN0
『何だ……? 量子波がマイクロコンマゼロ八秒で、異常値を感知! 魔法だ!』
『遅い!』
虹が脳内通信で怒鳴る。
544:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/19(日) 16:34:20.16 ID:PLPcklEN0
『解析完了。異常値を二つ感知。人間じゃない』
『魔法使い?』
『そのようだ』
545:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/19(日) 16:34:50.46 ID:PLPcklEN0
それは、通路を削り、地鳴りを引き起こしながら、凄まじい勢いですっ飛んでいき、正面の通路に突き刺さり……はしなかった。
キュン、という音がして、斜め上に弾かれる熱波。
そのままそれは、数メートルも壁の岸壁を抉って止まった。
546:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/19(日) 16:35:33.74 ID:PLPcklEN0
その向こう、今しがた熱波を弾いたところに、ポツリと、真っ白な毛をした猫とネズミがいた。
ネズミは猫の頭の上に乗ると、口をもぐもぐと動かした。ハスキーな少年の声が響いた。
「避けられた、避けられたね」
547:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/19(日) 16:36:16.29 ID:PLPcklEN0
それに向けて、一直線にチェーンソーを振り下ろす。
迂闊な坑道だった。
本来ならガゼルが、何とかして制止しなければいけない行動だった。
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