592:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/20(月) 18:03:58.36 ID:WO2eriwB0
窓ガラスにぶち当たりかけていた警備員達が、ドサドサと鈍重な音を立てて床に崩れ落ちる。
ルケンが振り下ろしかけていた手は、浮屋を庇うように立っていた愛寡の顔面寸前で止まっていた。
「師匠……」
593:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/20(月) 18:04:38.00 ID:WO2eriwB0
彼らを瞳孔が拡散した赤い瞳で見回し、愛寡は呟くように言った。
「爪は、不問。だけど、次はないわ。いいわね?」
その重い響きに、浮屋が起き上がり、そして深く息をついて、何かを言いかけた。
594:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/20(月) 18:05:22.55 ID:WO2eriwB0
「師匠……はたいた。俺、はたかれた……?」
呆然として呟く。
次いで、爪は小刻みに震え始めた。
595:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/20(月) 18:05:56.00 ID:WO2eriwB0
「…………」
「怒られるだけ、幸せ。そう思いなさい」
「俺……嫌われた? 俺、我侭言った。嫌われたか?」
596:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/20(月) 18:08:59.39 ID:WO2eriwB0
*
手を伸ばした。
その手は空を切り、そして虚しく中空を掻いた。
597:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/20(月) 18:09:26.21 ID:WO2eriwB0
「絵空事だよ、馬鹿め」
絵空事を信じる全ての人間よ、呪われてしまえ。
絵空事に甘んじる全ての人間よ、死んでしまえ。
598:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/20(月) 18:10:04.83 ID:WO2eriwB0
手を伸ばした。
その手は暗黒を掴んで、そして手繰り寄せた。
暗黒には、異常なほど質感も重さもなく、ただひたすらに、それは黒かった。
599:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/20(月) 18:10:37.57 ID:WO2eriwB0
だから馬鹿め。
絵空事なんだよ、馬鹿め。
カッカと哂った。
600:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/20(月) 18:11:40.16 ID:WO2eriwB0
*
目を開いた。
残った片目を開き、男はぼんやりと上を見た。
601:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/20(月) 18:12:20.59 ID:WO2eriwB0
「……何だ……」
呟いて、唯一残っている右足を見る。
僅かに血液がこびりついた後がある。
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