過去ログ - 黒井社長「行くぞっ!!青二才っ!!」(アイマスSS)
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2012/03/29(木) 13:14:11.97 ID:lnWJ8GSr0
「どうして?どうしてつきこをおいてかえっちゃうの?」
「大丈夫だツキコ。ただ、今ツキコはちょっと具合が悪いから、この家で蝶のおじさんに治してもらわないといけないんだ」
「またきてくれる?」
「もちろんだ。俺もくろもツキコが大好きだからな。ツキコが呼んだらすぐ駆けつけるよ」
「くろもきてくれる?」
「当たり前じゃないか。くろはいつまでもツキコの味方だよ。だから少しの間、良い子にしていてくれ」
「うん……わかった。つきこがまんする」
「よしよし、偉いぞツキコ。じゃあ俺とくろは帰るから、蝶のおじさんの言う事をちゃんと聞くんだぞ」
「ばいばい……あお、くろ……」
これが『ツキコ』と俺達の、最後の会話になった。屋敷の門の向こうでかすかに手を振るツキコを、俺は今でもはっきり憶えている。次に会う時
は、もう別人になっている。その晩京都から戻ると、ボスが珍しく俺に酒をおごってくれた。そこは会員制の高級バーで、中に入ると大きなグラ
ンドピアノと、横で歌を歌う可愛らしい女性がいた。ボスが軽く手をあげて挨拶すると、その女性は嬉しそうに微笑んだ。ボスの恋人だろうか
と疑ったが、どうやら旧い知り合いらしい。その晩はツキコの思い出話を酒の肴に、遅くまでふたりで飲み明かしたのだった―――回想終わり
***
「あれからもう1年以上も経つのか。随分昔のように感じるよ。いやあ、歳を取ると時間の流れが早いねえ」
社長がそう言った。俺達は当時の昔話をしていた。御二方は静かに聞いていた。
「ちょっと貴音の教育に時間がかかりましてなあ。今まで会わせることも出来んで、ほんまにすんませんでした」
「いやいや、でもまさかいきなり門の前で本人が迎えてくれるとは思いませんでしたよ。まだ驚いています」
謝罪の言葉を口にする御当主に、俺は慌ててフォローする。ツキコ……いや、今は貴音というのか……貴音を預けてから1年と3か月の間、俺と
社長は何度か四条の御屋敷を訪れたが、様子を聞くだけで一度も本人には会えなかった。元々無理なお願いをしているわけだから、こちらも深く
聞けなかったという事情もある。
「しかしああも立派になると、貴音の今後が楽しみですなあ御当主。将来は日本を代表するような、女陰陽師になさるおつもりかな」
社長が御当主に訊いてみる。四条家は陰陽師の大家で貴音はその家の養子になったのだから、将来は陰陽師になると考えるのが自然だろう。
「いや、残念ながらあの子は陰陽師にはなれませんわ」
しかし返って来た御当主の返事は意外なものだった。
「陰陽師の素養はあるんやけど、あの子はおばけや式神を怖がりますさかい」
それはかつて、御当主の式神を怖がった“ツキコ”の名残だった。『貴音』の人格を形成する過程で、ツキコの性格を完全に破壊すればそのよう
な事は起こらないはずだが……。ましてや御当主が陰陽師として貴音を育てようと考えていたのなら、おばけに怯えるような人格を作るわけが
ない。
「まあわしがもうちょっと頑張ったら、もしかしたら陰陽師にしてあげられたかもしれへんがなあ。でもそれもあの子の個性ですさかい……おい、
『あれ』持って来いや」
御当主が奥様に声をかけると、奥様はそっと席を外す。そしてタウンページ大の大きさの桐の箱を持って戻って来た。
「ふふ、あおはん。『これ』に見覚えありまっしゃろ?」
奥様がふたを開けると、そこには懐かしいものがあった。
「なっ……?!、何故『これ』がこんなところに……!?」
それは例のカルト教団から羽のついた少女達を救いだしてから、ツキコを四条家に渡すまで俺が毎日書いていた治療記録だった。何かの役に立て
ばと、当時組織に入ったばかりの駆け出しの俺が助けてからつけ始め、いつの間にか習慣化していた。最初は9人分だったが、月日が経つにつれ
てひとりまたひとりと少女が亡くなり、最後はツキコだけになってしまった。専門の精神科医のカルテに比べれば拙い記録でとても人様に見せら
れるものではなく、その存在を知る者は俺の他にいないはずだ。ツキコを四条家に渡した時に纏めて捨てたはずだったのだが……それにこの記録
は……
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