過去ログ - ウルフルン「食っちまうぞー!」みゆき「きゃー!」
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283:>>1 ◆eu7WYD9S2g[saga]
2012/04/28(土) 23:11:54.59 ID:R+8qzPw10

赤ずきんが提げていたのは、猟銃ではなくバスケットだったらしい。
それも中身はミートパイや葡萄酒ではなく、ましてや狼を返り討ちにするような兇器でもなく、柔らかいガーゼや温かい毛布。
幼さの残る細く白い指先が、ふんわりしたタオルと共に狼の鼻先に寄せられる。
乳児の柔肌を思わせる甘ったるい移り香が、鼻孔を苛立たしいほどにくすぐってきた。
以下略



284:>>1 ◆eu7WYD9S2g[saga]
2012/04/28(土) 23:13:14.15 ID:R+8qzPw10

二度三度と首を横に振ると、パンと腿を叩いて少女は立ち上がる。
今にも駆け足で薄暗い裏路地を去っていってしまいそうだ。
くるりと踵を返すと制服のスカートの裾が、湿気を含んで重たくなった風にかすかに靡いた。
その無垢で無防備な背中を目の当たりにした瞬間、狼の全身をある欲求が支配した。
以下略



285:>>1 ◆eu7WYD9S2g[saga]
2012/04/28(土) 23:15:18.13 ID:R+8qzPw10

晴れ渡る青空のような――空は生憎の雨模様だったが――清々しい笑みが、冷たい湿気にけぶる天が下を照らし出した。
弾むような足取りで駆け寄ってくる少女を見て、狼は内心でほくそ笑む。
どこまでも想像に違わない反応である。
どこまでも純粋で、健気で、疑うことを知らない――――
以下略



286:>>1 ◆eu7WYD9S2g[saga]
2012/04/28(土) 23:16:29.57 ID:R+8qzPw10

――――の、はずだった。


『…………んで』
以下略



287:>>1 ◆eu7WYD9S2g[saga]
2012/04/28(土) 23:17:54.40 ID:R+8qzPw10

それだけが、狼の知る唯一のハッピーエンドだった。
狼が知っている幸せは、獣欲と肉欲の入り混じった醜悪な色をしていた。
だから狼は、黒い不幸の方が好きだった。

以下略



288:>>1 ◆eu7WYD9S2g[saga]
2012/04/28(土) 23:20:11.51 ID:R+8qzPw10

天を衝く狼の吼声は雨音に掻き消され、今だけは味気ないモノトーンに彩られている七色ヶ丘に、遠く響き渡っていくことはなかった。
なめらかな頬から形の良い顎へと伝った赤い道の通行者が、少女と狼の間の地面に吸い込まれ、水たまりにゆるりと融けていく。

これ以上はもうダメだ。
以下略



289:>>1 ◆eu7WYD9S2g[saga]
2012/04/28(土) 23:21:31.19 ID:R+8qzPw10

『ふっ……はは、は、はははははははははははは!!!!!』


狂笑が、肺臓の底からひとりでにあふれ出してきた。
以下略



290:>>1 ◆eu7WYD9S2g[saga]
2012/04/28(土) 23:23:55.86 ID:R+8qzPw10

思いきり突き立てたはずの鉤爪の、刺さった先の無防備な背中に視線を移す。

浅い。
明らかに、浅い。
以下略



291:>>1 ◆eu7WYD9S2g[saga]
2012/04/28(土) 23:24:57.76 ID:R+8qzPw10




『なんでまだ笑ってられるんだよ、お前はぁぁぁああああぁぁあ!!!!』
以下略



292:>>1 ◆eu7WYD9S2g[saga]
2012/04/28(土) 23:26:06.62 ID:R+8qzPw10

限界だった。


『恐れろよ! 怖がれよ! 痛いんだろ、辛いんだろ、苦しいんだろ!! だったら俺を恐れろッ!!! のたうち回ってもがけ、頭を抱えて叫べ、指を差して俺を……俺をォォォォッッ!!!』
以下略



293:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸)[sage]
2012/04/28(土) 23:27:04.23 ID:bwOr37wAO
あれ?スレ間違えたかな…


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