7:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)
2012/04/24(火) 16:58:35.35 ID:D+xZ8dty0
「寂しかったよぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」
ぼふんっ、と柔らかな音を立てて、その物体は美国織莉子の胸の谷間へと収まった。恐らくはほとんどの男性諸氏がそうしたくなる豊満な胸へと、その少女は盛大に顔を埋めたのだった。
「あ、あ、あ!やっぱり織莉子はイイ匂いだ!何度嗅いだってイイ匂いだ!あぁぁ……織莉子ぉ、イイよ、イイよぉ……」
それは、なんだかやたらと言動がアグレッシブな少女だった。何と言ったら良いのだろう、人間が日常生活を営む上で重要な何か――特に羞恥心といったようなものが、すっぽりと抜け落ちてしまっているかのような、そんな雰囲気を漂わせていた。
「もう、キリカ!今日は体育があったんだから、そんな風に臭いを嗅いだら……」
「そんなの関係ないね!あぁぁ……やっぱり織莉子は素敵だぁ、無敵だぁ……愛してるぅ……」
この娘はいったい、なんなのだろう。なぜ、クラスでは悪意だけを向けられていた美国織莉子と言う人間に、これほどまでに――言っては悪いが病的に思えるほどに、懐いているのだろうか。
仲良きことは美しきかな、だがそれにしては、少々行き過ぎている気がしないでもない。そう、マミは思った。
「ちょっと……キリカ。続きはまた後で、ね?ほら、朝学校へ来るときに、話したい人がいるって言ったでしょう?だから、ちょっと今は……」
「ちぇっ、しょうがないなぁ……後で、絶対だよ?」
「もちろん!私が貴女に嘘を吐いた事があったかしら?」
「ないね、ない!ありっこない!」
「でしょう?だから――」
織莉子が言葉を言い切る前に、彼女――キリカと呼ばれた少女は、巴マミに顔を向けた。
「私の名前は呉キリカ!はじめまして、だ。黄色いの!」
やはり、この娘は壊れている。まるで、おたまで脳の大事な部分を1000グラム単位で掬い取られてしまったかのように。
巴マミは、この奇天烈な言動を取る少女を前にそう思わざるを得なかった。
彼女らの昼食はサンドイッチと紅茶だった。
籐のバスケットの3分の2程度を占めるパンと、小型の水筒が2本。サンドイッチの内訳は玉子、ベーコン・レタス、ツナマヨネーズ、の3種類。それに加えて、苺とクリームをサンドしたものが二切れだけあった。それがきっと、彼女らのデザートなのだろう。
マミは自分で作った、おかずとご飯とが1:1の比率で埋められたごく普通の弁当を口にする。二人がお互いに食べさせ合っている間、マミは終始無言だった。それは何を話しかけたら良いのか分からない、というよりも、むしろこの二人の間に割って入るのが憚られたからだ。そのいちゃつきようと言ったらなく、友達が行き過ぎてそのままハネムーンに来てしまったかのようだ。
最後のクリーム苺サンドをこれぞ最上だと思えるほどの良い笑顔でぱくつく呉キリカと、同じくらいに満面の笑顔でそれを見る美国織莉子は、どこまでも幸せそうだった。
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