過去ログ - 後輩「それじゃ、本当にこれでお別れです」
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305:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/05/10(木) 14:43:03.14 ID:T5BAMud9o

 結局、ここ数日の俺は振り回されてばかりだった。
 なにひとつ突き止めることはできなかったし、なにひとつ取り戻すこともできなかった。

 俺は何もしていないのと同じだった。何かを得ようとしてあの鏡を調べようとしたのに、何も得られなかった。
以下略



306:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/05/10(木) 14:43:29.25 ID:T5BAMud9o

 学校には人の気配がしなかった。時間が時間だというのもあるが、それよりももっと根本的に、人がいなくなりつつある。
 俺は旧校舎に足を踏み入れ、鏡へと向かった。薄暗く埃っぽく黴臭い。誰が好き好んでこんな場所に近付くのだろう。
 錆びついたドアノブを思わせる場所。そんな場所に。

以下略



307:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/05/10(木) 14:44:00.84 ID:T5BAMud9o

 何もかもが相対的で、だからこそ物事が懐疑の波に襲われている。俺は別にシニシストじゃない。
 けれど、他にどういう態度がありえるのだ? 

 どんなものも相対的な価値しか持ちえないということは、結局のところどんなものにも価値なんてないのだ。
以下略



308:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/05/10(木) 14:44:44.13 ID:T5BAMud9o

 手首は変わらず落ちていた。赤黒い断面が覗く。鏡の傍には何もなかった。
 魅力的なものもなければ恐ろしいものもなかった。手首だけがあった。痕跡だけがあった。

 それは何ももたらさない。
以下略



309:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/05/10(木) 14:45:20.40 ID:T5BAMud9o




 作業を終えてスコップを用務員室に戻す。手を洗ってから、俺は手首を埋めた場所をもう一度覗いた
以下略



310:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/05/10(木) 14:45:54.08 ID:T5BAMud9o

「拗ねてるの?」

 女は言った。どうやら俺に向かって言ったらしいが、興味が湧かなかった。

以下略



311:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/05/10(木) 14:46:49.69 ID:T5BAMud9o

 生まれてこのかた、世界は理不尽で不条理で唐突だった。もちろん楽しいこともあったが、それすらも価値を持たないものだ。
 こんな悪趣味な世界にどうして俺は生まれなければならなかったのだろう。
 考えるのはいつもそのことだ。ましてや何故生きていかねばならない?
 まったく無価値で悪趣味で不条理な世界。なぜ俺たちはこんな場所にこんなふうに生まれたのだろう?
以下略



312:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/05/10(木) 14:47:18.47 ID:T5BAMud9o



 
「おや」
以下略



313:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/05/10(木) 14:47:52.08 ID:T5BAMud9o

「必要?」

 冗談よせよ、と俺は思った。

以下略



314:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/05/10(木) 14:48:22.45 ID:T5BAMud9o

 俺は街を歩いた。もう外は夜だった。電灯と看板に照らされた街。ひどく空しい。
 眠るべきだ。
 みんな眠ってしまうべきだ。夜は特に。

以下略



315:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/05/10(木) 14:48:50.78 ID:T5BAMud9o


 ――甘い匂い。
 
 路地は暗く、視界はきかない。匂いのする方へ近づいていく。一歩一歩。 
以下略



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