720:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/06/28(木) 12:46:11.07 ID:AasgcWJTo
「アドレス、変えてなかったんだね」
甘ったるい、鼻にかかったような声が、電話越しに聞こえた。
俺はなんだか奇妙な錯覚に陥る。アキがいる、と思った。この電話の向こうに。
721:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/06/28(木) 12:46:37.34 ID:AasgcWJTo
「別に。寝てた」
答えてから、そういえばこんな言葉を以前もアキに向けて言ったことがあると思って、妙に据わりの悪い気分になる。
いったい、何が起こっているんだ。
722:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/06/28(木) 12:47:05.69 ID:AasgcWJTo
「どうしたのって、そっちが連絡してきたんだろう」
俺はやっとの思いで答える。用件を早く言ってくれ。
723:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/06/28(木) 12:47:34.80 ID:AasgcWJTo
「ねえ」
とアキは言った。普通の、声音だった。何も特別なことのなさそうな。
気まぐれに隣の席のクラスメイトに話しかけるような、気安げな声だった。
724:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/06/28(木) 12:48:00.94 ID:AasgcWJTo
「分からないけど、もういちど会ってみたい」
「なぜ」
725:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/06/28(木) 12:48:30.62 ID:AasgcWJTo
「いつから付き合ってるの?」
「先月からかな。ちょうど一ヵ月になるくらい」
726:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/06/28(木) 12:48:56.31 ID:AasgcWJTo
「わたしが一方的に甘えてただけなんだよね。怒っちゃうのも、当然だと思う」
俺は息苦しくなる。
727:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/06/28(木) 12:49:46.30 ID:AasgcWJTo
「……ああ」
と、やっと漏れ出した頷きは、溜め息のようにかすかだった。
それでもアキは声を安堵の色に変えた。
728:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/06/28(木) 12:50:14.80 ID:AasgcWJTo
「わたしはさ、あなたと話したいこととか、いっぱいあるよ」
「悪いけど」
729:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/06/28(木) 12:50:41.59 ID:AasgcWJTo
電話を切ると、部屋は耳鳴りがしそうな静寂に支配されていた。
俺の頭は混乱している。努めて何も考えないようにしたが、どうしても暗い気分になる。
なぜ?
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