5:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/07/27(金) 02:24:41.18 ID:5GufPHXCo
 音無君はけちだねえ 
  
 そういって苦笑いする社長の顔を思い浮かべる。 
  
 それを言われるたびに、 
6:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/07/27(金) 02:25:56.60 ID:5GufPHXCo
 ひょっとしたら、ずっとこの事務所で働き続けて、 
 出逢いなんてこの先ないまま一生を終えてしまうかもしれない。 
  
 もっともそんなものがあったとしても、 
 私にはきっと無理だと思い込んで 
7:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/07/27(金) 02:26:36.39 ID:5GufPHXCo
 その朝、目を覚ますと驚くほどに体がだるかった。 
  
 熱もありそうだし何よりのどがおかしい。 
  
 声が全くでないのだ。 
8:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/07/27(金) 02:27:38.06 ID:5GufPHXCo
 次の日になって、熱は下がったのだが 
 依然としてのどの様子はおかしかった。 
  
 声がまだ出ないのだ。 
  
9:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/07/27(金) 02:28:16.48 ID:5GufPHXCo
 「おかしいですねえ。咽頭には炎症がありませんねえ」 
  
 粘るような口調でその老医が言う。 
  
 小鳥はボールペンをノートに走らせた。 
10:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/07/27(金) 02:29:12.96 ID:5GufPHXCo
 [他に何か原因は考えられないんですか?] 
  
 「そうですねぇ… 
 たとえば、失恋をしたとか仕事が忙しくて休みがないとか 
 そういうの、ありませんか?」 
11:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/07/27(金) 02:30:29.89 ID:5GufPHXCo
 [思い当たることはないです] 
  
 「そうですか…」 
  
 そう言ってカルテに何か書き込み、こちらを見ないまま言った。 
12:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/07/27(金) 02:32:40.05 ID:5GufPHXCo
 重い足取りで病院を後にする。 
  
 ―――もしかしたら重病なのかもしれない。 
  
 漫画などで悲劇のヒロインに涙することは 
13:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/07/27(金) 02:33:48.74 ID:5GufPHXCo
 ―――ここで涙を流しても蒸発しちゃうのかしら。 
  
 そんなことを考えながら帰路を辿っていく。 
  
 いい年をして両親を頼るのも抵抗があるし、 
14:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/07/27(金) 02:35:05.49 ID:5GufPHXCo
 こういう時に恋人がいればいいのだろうが、 
 小鳥は、とことん孤独だった。 
  
 いつも使っていた声でさえ自分から離れて行ってしまったのだ。 
  
15:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/07/27(金) 02:37:49.47 ID:5GufPHXCo
 ―――それにしてもまさか上の名が体をあらわしてしまうなんて 
  
 家に帰ってダージリンを淹れながらそんなことを思う。 
  
 歌が好きな小鳥、 
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