過去ログ - 恒一「『ある年』の3年3組の追憶」
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11:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/08/06(月) 21:10:36.46 ID:4DOG5YTr0
◆No.19 Junta Nakao
中間試験の日程が張り出され、クラスの空気が重くなるのが、
手に取るようによくわかった。
放課後、俺は杉浦と小椋、そして赤沢さんと共に、転校生の様子を窺っていた。
きっかけは、勅使河原と風見の話だった。
あの二人は小学生からの幼馴染だというのは聞いていたが、
時々あの凸凹コンビがうらやましくなる時がある。
「杉浦、お前はいつから赤沢さんと一緒にいたのかよ?」
「幼稚園の頃からよ。小学校は別だったけど、
わたしたちは家が近所だったから、かれこれ10年近い付き合いかな・・・」
そういう俺は、古い付き合いの友達はいない。
そもそも、昔のことをあまり思い出したくないのだ。
小学生の頃、俺は肥満体型だった。たぶん、おやつの食べ過ぎとかだったろう。
勉強も運動も特に秀でたものが無く、見た目も成績も平均以下だった俺は、
悪質ないじめこそ無かったものの、周りに引け目を感じていた。
そんな俺が変わるきっかけとなったのが、誰だろう赤沢さんだった。
中学に入ってすぐ、初めてのクラスで一緒になった時、
俺にとって、赤沢さんはまさに高嶺の花だった。
容姿端麗、才色兼備。
自然とその周りにはクラスメイトが多数集まってきた。
日陰者の俺とは大違いだった。
ところが、秋になってから、赤沢さんは時々、
ふと寂しげな表情を見せることが多くなった。
話によると、お兄さんが何かの事故で亡くなったらしい。
いつも太陽のように明るく、
俺たちを照らしてくれる赤沢さんの悲しい顔を、俺は見たくなかった。
赤沢さんは赤沢さんのままでいてほしい。
でも、今の俺は何もすることができない。
そう思った俺は、自分を変えることを決めた。
まずはこの見た目を何とかしたかった。
図書館でやせる方法を色々探したが、結局は体を鍛えることで結論が出た。
半年以上遅れて陸上部に入った俺を、部員たちは変な目で見てたに違いない。
しかし、どうだろう。それでも元からの素質が多少はあったのか、
ランニングなどを続ける内に、俺はみるみる痩せていった。
ぜい肉が見事なまでに筋肉になり、顔も別人のように引き締まった。
昔の俺を知る人が見たら、誰か気づかない奴も多いだろう。
年が明けてから、俺は少しずつではあるが、
赤沢さんの小間使いのようなことを続けて、手助けするうちに、
その信頼を勝ち取ることができた。
杉浦はその頃からの腐れ縁である。
昔の俺を知ってる連中の中には、「哀れっぽい」とか「駄犬」とか言って
陰口を叩いている奴もいたが、そいつらには言わせるだけ言わせておけば良かった。
俺はこの通り、体型まで別人のように生まれ変わったのだから、
充分見返してやれるのだ。
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