過去ログ - 恒一「『ある年』の3年3組の追憶」
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13:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/08/06(月) 21:12:46.76 ID:4DOG5YTr0
「天は二物を与えず」なんてことわざは、
恵まれない奴が思いついた、ひがみじゃないのかと時々思う。
赤沢さんは二物以上与えられているけど、別に嫌な思いをしたことは無いのに、
榊原に当てはめてみると、どうしても納得いかない。
俺が血のにじむような努力を重ねて得た物の何倍もの要素を、
榊原は生まれながらに持っているからだった。
どこで、こんなに差が付いたのか。
やっぱり神様は不公平だと思う。別に神様なんて信じてないけど。
と、そんなことを考えている間に、

「聖心なんとかって女子校、行くんじゃなかったんかよ」

「行きたいなんて、一言も言ってないんだけど」

「お前も無駄に苦労してんな・・・」

ああ、赤沢さんが不機嫌になってしまった。

同時に俺も気落ちしてしまう。
赤沢さんと一緒にいられるのも、
中学校で終わりなんだという現実に引き戻されてしまったから。
俺にとって、赤沢さんの存在が青春そのものなのだ。

それに、勅使河原が言ってた聖心女学園とかいう高校は、
閉鎖的で校則がやたら厳しいお嬢様学校だと聞く。
おまけに、数年前には生徒が大勢殺されたという噂もあり、
ある意味、うちのクラス以上に物騒な所らしい。
そんな危ないところに、赤沢さんは行ってほしくなかった。

でも、榊原のヤツと一緒に東京に行ってしまうというのも、
なにか腑に落ちない。
赤沢さんの幸せが、俺にとっての幸せなんだから、
何とかしてあげたいのは、山々なんだが。
もし俺に金も才能も実力もあったら、迷わず一緒に東京に行ったのに。
所詮平凡な俺にとって、赤沢さんは決して届かない存在でしかないのか?

「はぁぁ〜」

と情けなく、ため息をついた俺に

「中尾君、どうかしたの?」

と声をかける人がいた。赤沢さんの親友の、桜木だった。
同じ対策係として、話し合いで時々一緒になることはあるけど、
こうやって、直接会話したのは初めてかもしれない。

「い、いや・・・別になんともないっすよ」

俺はそう言って、足早にその場を去った。
なんか、今の会話の後で突き刺すような鋭い視線を感じたし、
何より、赤沢さんがあの男に惚気る姿を見たくもなかったからだ。


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