過去ログ - 恒一「『ある年』の3年3組の追憶」
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148:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/08/06(月) 22:59:31.79 ID:4DOG5YTr0

見崎さんの話によると、5月から始まった災厄は、
あの火事を最後に終わったのだという。
沢山の人が犠牲になり、生き残ったクラスメイト達も、
誰もが心に大きな傷を残した。
それでも皆、少しずつではあるが悲しみを乗り越えて、
前を向いて歩き始めている。

私も、髪型だけじゃない。
「災い転じて福となす」と言ったら、犠牲になった人たちに失礼だけど、
内面も少しずつ一歩一歩変えていこうと思うようになった。
合宿で親しくなった松子ちゃんとは、今も時々電話したり、
直接会って、色々取り留めないおしゃべりをする間柄となった。
共に逃げ延びて、今も入院中の渡辺さんとも何度か見舞いに行くうちに、
だいぶ打ち解けるようになった気がする。
一見恐い印象を受ける彼女も、話してみると案外気さくで、
頼りがいのあるお姉さんみたいな存在だった。
また、渡辺さんや松子ちゃんの幼馴染の佐藤さんも、
病院で何度も会う内に親しく会話するようになった。
彼女も私と同じように、元々引っ込み思案な性格なので、結構馬が合いそうである。

そして、一度は修復不可能なくらいの大喧嘩をしたけど、
炎の中をくぐり抜けて、一緒に生還を果たした辻井君。
これからも、様々な困難が私たちを待ち受けることだろう。
でも、私たちは文字通り生死を共にした仲である。
もう誰が相手であろうとも怖くはないし、誰にも邪魔はさせない。
私たちはそれだけ固い絆で結ばれたのだから。

まだ蒸し暑い夏はしばらく続く。
でも、暦の上ではもう秋になっているだけあって、
夕方になると、時々涼しい秋風が通り過ぎていく。
間もなく秋が来て、あっという間に冬、そして中学最後の春を迎えるのだろう。
波乱に満ちたこの夏も、間もなく終わろうとしていた。



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