過去ログ - 恒一「『ある年』の3年3組の追憶」
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19:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/08/06(月) 21:17:09.89 ID:4DOG5YTr0

「これは・・・」

「は、はい。この場に相応しくないことは重々承知してますが、
どうしても・・・あ、本当にすみません」

「チューリップか・・・。ゆかりはこの花が好きだったからね。
きっと、天国のゆかりも喜んでいると思うよ」

そう言って、ゆかりのお父さんは快く、その花束を受け取ってくれた。

「ありがとうございます」

本当ならば、愛する妻と娘を一度に失った彼の方が、
僕なんかよりずっと辛い思いのはずだ。
にも関わらず、こうして僕一人のわがままを聞いてくれたゆかりのお父さんに、
お礼の言葉だけでは、とても感謝しきれないだろう。

「娘の顔を見てやってくれないか。ゆかりも待っていただろう」

ゆかりのお父さんに促されて、僕は棺の中に納められたゆかりの顔を拝見した。
苦しんだ表情はもう見られない。
しかし、首元に何重も巻かれた包帯が、あの惨劇をいやが上にも思い出してしまう。
そして、笑顔を浮かべた遺影とは異なり、そこに生の色はどこにも感じられなかった。
やるせない思いで一杯になりながら、僕は席に戻った。

告別式が始まり、僕にも焼香の番が回ってきた。
ゆかりの家族とその身内で固められた中、僕はかなり目立っていただろう。
式が終わり、ゆかりの棺を乗せた霊柩車が火葬場へと去って行く。

ここからは本当に限られた親族だけとなるため、
僕は重い足取りのまま、自転車を漕いで帰路についた。
今頃、ゆかりはもう骨と灰だけになってしまったのだろうか?
そう思った瞬間、式中は耐えていた涙腺が、
ダムが決壊するかの如く崩壊した。

「ゆかり・・・、ちくしょおぉぉ・・・!!!」

涙がとどめなく流れながら、そして泣き叫びながら、
自転車を猛スピードでかけぬける僕を見て、
すれ違った通行人は、絶対不審に思ったに違いない。
周りからどう見られようともかまわなかった。

僕が愛したゆかりとは、もう二度と会えないのだから。


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