過去ログ - 恒一「『ある年』の3年3組の追憶」
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24:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/08/06(月) 21:21:23.32 ID:4DOG5YTr0
どれだけ私は、泣き叫び続けていたのだろうか。
パトカーもやって来て、警察官まで姿を見せている。
そして、目の前には幼子をあやすように、心配するこういっちゃんがいた。
ふと自分の状況がどうなっているかと言うと、
肩を上下に揺らしながら、今でも息切れが止まらず、
喉はカラカラに涸れて痛みすら感じる。
顔も涙だけでなく、鼻水までズルズル流していて、
格好悪いと言ったらありゃしない。
こういっちゃんの前で、こんな無様な姿を見せた自分が恥ずかしかった。
それこそ、穴があったら入りたい心境だった。
「もう大丈夫だよ、綾野さん。僕が警察の人に、訳を話したから・・・」
「あじがど・・・ごういっひゃん・・・」
涙声と鼻声でろれつも回らない私に、どこまでもこういっちゃんは優しかった。
ふと、こういっちゃんが手を差し伸べてくれたので、
座り込んだままだった私は懸命に立とうとするが、
腰に力が入らず、なかなか立てない。
まるで、生まれたての子鹿のようだ。
「立てる?僕が支えてあげるから」
「ふぇっ?ぞんな、恥ずがひいよ・・・」
立ち上がるだけでもこんなに苦戦するのは、正座で足が痺れた時以来だろうか?
何とか立ち上がれた私を、こういっちゃんはガラスの破片も無い、
安全なところまで連れて行ってくれた。
「ごめんね、こういっちゃん。私が呼び止めたりしたから・・・」
「ううん、綾野さんが無事で良かったよ。それより、家まで送ってあげようか?」
「大丈夫だよ、もう平気だから・・・」
こういっちゃんはまだ心配していたみたいだけど、私は無理に笑顔を作った。
「そっか。じゃあ、気をつけてね。あ、そうだ。僕も明日から学校に行くから。
僕の方こそ、ずっと休んで心配かけてごめんね。それじゃ」
そうだった。こういっちゃんは、先週の事件の直後、
肺が危ないとか言って、ずっと病院通いだったんだ。
あれっ?こういっちゃんはどこ行くんだろう?
あっちは私やこういっちゃんの家の方向じゃないんだけど・・・?
帰り道、私の足取りは重かった。
事故に出くわした恐怖もあった。
でも、それ以上に私は恥じ入る思いでいっぱいだった。
こういっちゃんはあんな恐ろしい事件を前にしながら、
危険だらけの学校やクラスに戻ろうとしている。
私がこういっちゃんに説明した、泉美だって今でもクラスを守るために、
災厄と真っ正面に向き合っている。
それにひきかえ、私はどうだろう。
災厄に巻き込まれるのが怖くて、一人逃げ出した。
今思えば、ガラスが倒れたあの事故も、
大切な友達を見捨てた罰が当たったのかもしれない。
このままじゃいけない。
明日からではもう遅い。今日から変わらなければ!
そう思いながら、自分に活を入れて、私は帰路についたのだった。
ちなみに帰った後、
私がお母さんにこっぴどく叱られたのは、言うまでもない。
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