過去ログ - 恒一「『ある年』の3年3組の追憶」
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41:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/08/06(月) 21:37:03.29 ID:4DOG5YTr0
◆No.10 Kenzo Kawahori
『いないもの』が二人になって、一ヶ月が過ぎた。
ホームルームで赤沢が新しい委員長になり、
翌日から『いないもの』を増やす直前、高林が心臓発作で急死した。
サッカー部に入って、外で躰を動かしてばかりいる俺は、
高林とは話すこともなかったが、それでもクラスメイトが
また一人死んでしまったことは、クラスに衝撃と喪失感を与えた。
せめてこれが最後であって欲しい。もう二度と犠牲者が出てこないで欲しい。
誰もがそう切実に思い続けたこの一ヶ月。
幸いにも、クラスメイトだけでなく、その家族からも、
一人も死者が出ることなく、クラスは平穏な日常を取り戻しつつあった。
けどそれは、いつ惨劇が再開するかもしれないという
恐怖に耐えなければならない、見せかけの平穏だったかもしれない。
見せかけでもいい。
このまま誰も死なずに卒業式まで終わったら、万々歳じゃないか。
そう言い聞かせながら、心の中では誰もがまだ不安を抱いていたに違いない。
そして、そんな期待が空しいものだったということを、
俺たちは嫌と言うほど、思い知らされることとなる。
夏休みも間近に迫った、7月13日の早朝。
こっちも滅入ってしまう位、じめじめした梅雨がようやく明けて、
雲一つない、いい天気になった。
日差しは強いがからっとした陽気で、
何事も無ければ、絶好のサッカー日和になるはずだった。
また、長かった期末試験の苦しみからようやく解放されたばかりである。
単に勉強が嫌だっただけでなく、テストはある種のジンクスだった。
そう、全ての始まりだった桜木の死は、中間試験の真っ最中であり、
テストをやってる間に同じような事件が起きるのではないかと、
心配していたのは、俺だけじゃないはずだ。
そのジンクスを乗り越え、俺たちが安心した油断を突くかのように、
あのおぞましい事件は起きたのである。
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