過去ログ - 恒一「『ある年』の3年3組の追憶」
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47:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/08/06(月) 21:41:55.76 ID:4DOG5YTr0

「優矢君、落ち着いた・・・?」

しばらくして姉さんはそう言って、そっと離れた。
まだ泣き止んだばかりで気持ちが高ぶりが残っていたボクは、
首をこくんと縦に振ることしかできなかった。
まだ、目が腫れぼったくて、少し鼻をすすってしまう。

「姉さん、あのね・・・ボク、実は・・・」

言いかけて、ボクは止めた。
ボク自身の悩み、それはこのクラス全体の悩みでもあった。
次々にクラスの関係者が死んでいく災厄の恐怖・・・
今度は自分や三神先生の番じゃないか?という不安に、卒業式まで耐えられるのか?
とにかく打ち明けて、胸の奥にある苦しみを吐き出したかった。
アドバイスとか打開策とかが、なくてもいい。
少しでもボクの中の不安が和らぐのならば。
そんな囁きをボクに吹きかけてくるのは、ボク自身の心だ。

そんな願望は自分勝手だと言って釘を刺す、もうひとりのボクもいる。
ボクは榊原君に真実を話そうとして、
目の前で苦しみながら死んだ高林君のことが未だに頭から離れない。
それに、噂で聞いた話だけど、高林君の少し前に亡くなった水野君のお姉さんも、
ボクたちのクラスの実情を知ろうとしていたらしい。
クラスの秘密をばらしてはいけない。
話したら、自分だけじゃなく、その相手までも被害が及ぶと言う。
腹違いでも姉さんは二等親だから、災厄の対象に充分なり得る。

ボクの中で、二つの心が板挟みとなって揺れ動く。

「大好きで大切な姉さんを、こんな恐ろしい出来事に巻き込んでいいのか?」

「いや、元々お前の姉さんだっていつ危ない目に遭っても
おかしくないんだから、話しても話さなくても同じだよ」

決めた。姉さんにこのことを打ち明けよう。
もし黙ったまま、姉さんの身に何か起こったら、その時後悔しても
もう遅いのだから・・・

「姉さん、実は・・・」

ボクは意を決して、姉さんにクラスの事情を話した。
3年3組を苦しめる呪い、既に何人も死者が出た現状、
そして今日、久保寺先生も災厄で自殺してしまったこと・・・
一旦しゃべり出したら、堰を切ったように伝えたいことを思い切り話した。
こうなったら、もう後戻りはできないのだから。

「その話、本当だったのね・・・。あたしは3組じゃなかったけど、
当時も3組の生徒が何人も死んで、うちのクラスの中でもなんか変だぞって
噂になって・・・でも、教えてくれてありがとう」

「ごめんなさい。姉さん・・・これで姉さんも巻き込む形になっちゃって・・・」

「心配しないで。それよりも、勇気を出して話してくれたのね。えらいわ」

姉さんがボクの頭をよしよしとなでる。
もう子供じゃないよと思ったけど、悪い気はしなかった。

「あたしの店には、学校のOBやOGも結構来てるみたいだから、
心当たりのある常連さん辺りに目星を付けてみるわ。
何かいい情報があったら、電話で連絡するね」

「本当に・・・本当にありがとう。姉さん!」

姉さんにはこれからも頭が上がらないな。
そう思いながらも、ボクは姉さんに感謝の気持ちでいっぱいになった。



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