過去ログ - 恒一「『ある年』の3年3組の追憶」
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48:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/08/06(月) 21:42:31.77 ID:4DOG5YTr0

翌日、これまでの教室はもう当分使えそうにないため、
3組はB号館の空き教室に移転した。
やっぱり・・・と言うべきか、あちこちで空席が目立っており、
後で確認したら、いたのは12人、つまり半数以上が欠席していた。
無理もない。あんな事件が起こったのだから、
学校に行くのが怖くなってもおかしくない。
正直、ボクも行くかどうか朝までかなり迷ったのだ。

ホームルームの始めに、三神先生から色々連絡事項があった。
久保寺先生の代わりとして、三神先生が担任代理務めることとなる。
本当だったら涙が出るくらい嬉しいことなのだけれど、
昨日のことがある以上、とても喜ぶ気にはなれない。
それに、この呪われた3組の担任という重責がのしかかった
三神先生の辛さを懸命に隠した表情を、見るのが辛かった。

そして、赤沢さんが主導のもと、ホームルームが滞りなく進み、
これ以上『いないもの』が無意味だとして、
榊原君と見崎さんの『いないもの』が解除された。
中尾君は不服そうな面持ちをしていたが、
赤沢さんに睨まれると、あっさり引っ込めた。

とにかく、これでやっと榊原君と見崎さんに謝ることができる。
クラスの決めごととはいえ、二人にはひどいことをしてしまったから、
許してもらえなくても、きちんと謝りたかった。
けど、ホームルームが終わった途端、さっそく勅使河原君が二人に話しかけて、
ボクの入る余地もなく、移動教室が重なったこともあって、
直接話せたのは午後になってからだ。

「えと、その・・・榊原君、見崎さん。今まで不愉快な思いさせちゃったよね・・・
特に榊原君は事情も知らせてなかったから・・・本当にごめんなさい・・・」

「勅使河原から聞いたよ。別に嫌な思いもしてないし、気にしないで。
それに『いないもの』になったおかげで、
見崎のことも『いないもの』もだいたいわかったから、
あのまま何もわからないまま過ごすより、ずっと良かったと思ってるし」

「そっか・・・あと見崎さんも、色々迷惑かけちゃったみたいで・・・」

「いいの。家にも美術道具は沢山あるから、わざわざ美術室に行かなくても
家で描けば済むことだし」

見崎さんとは、同じ美術部で三年間一緒だったけど
どうも、未だにその真意を読み取ることができない。
ちょっと苦手意識があると言うべきなのか・・・

「そ、そうだ。見崎さんの描きかけの絵は、ちゃんと美術資料室に
保管しておいたよ。後で取りに来てね。よかったらボクが・・・」

「いい。自分で持って帰る」

「・・・」

そう、見崎さんとは会話が続かないのだ。
これが三神先生のように、間に第三者がいれば、特に問題はないのだけど。
見崎さんは榊原君といつも一緒だから、これからは榊原君を通して話せば、
少しはお互いにわかり合えるのかもしれない。



ところでこの日、ホームルームの前にちょっとした事件が教室で起こったのだけど、
それはまた別のお話。



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