過去ログ - 恒一「『ある年』の3年3組の追憶」
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55:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/08/06(月) 21:47:44.38 ID:4DOG5YTr0

目が覚めた時には、既にあたりは真っ暗だった。
誰かが持ってきてくれたのだろうか、シーツがかかっていた。
時計を見ると、短針は12時を回っている。
家に着いたのが6時近くで、病院に着いたのが7時前ということは、
五時間近くも眠っていたと言うことなのだろうか?
こんな時によく寝られたとも思ったが、
もしかしたら躰がこのまま現実の世界に戻るのを拒み、
夢の世界に逃げていたかったのかもしれない。

お母さんもまた、そばで眠っている。やはり疲れ切っているのだろう。
お父さんはどうしたのか。いや、それより兄貴は・・・?
二つの人影が近づいてくる。
一人はお父さん、もう一人は格好からして医師に間違いないだろう。
あたしが起きていたのに気づいたらしく、お父さんはうつむいた。
じゃあ、兄貴はやっぱり・・・
最悪の事態を覚悟しても、まだどこかしら希望を捨てられずにいた。
だが、お父さんの口から出た言葉は、

「由美・・・、敦志は・・・ダメだった・・・」

全身から悔しさをにじませて、お父さんはその場でうずくまった。

「嘘・・・嘘だよね・・・お父さん。ねぇ、嘘だと言ってよ!」

お父さんにつかみかかるあたしを、隣にいた医師の先生が必死になだめる。
それに気づいて目が覚めたお母さんも、話を聞いた途端、泣き崩れた。

地下二階にある霊安室。そこに、兄貴の亡骸が安置されていた。
躰も顔もミイラ男のように包帯でくるまれ、その白い包帯も血にまみれていた。
頭の骨も折れたのか、あり得ない形に凹んでいる。

「こんなの嫌だ・・・ねぇ、また昔の兄貴に戻ってよ・・・
あたしを助けてくれた兄貴に戻ってくれよ・・・ねえってば!!!」

必死に揺り動かしても、兄貴はピクリとも動かない。
兄貴がいつか立ち直ってくれる、その希望は永遠に奪われてしまったのだ。
後に出てきたのは、言葉にならない嗚咽だけだった。



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