過去ログ - 恒一「『ある年』の3年3組の追憶」
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59:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/08/06(月) 21:50:12.17 ID:4DOG5YTr0
「ひぃっ・・・!」
私だけじゃない、右隣の風見君からも同じような呻き声が聞こえたが、
久保寺先生は包丁を喉に突き立てたまま、顔を正面に見据えると、
こちらをギロリと睨み付けた。
先生の双眸は、恨みや怒りといったあらゆる負のオーラに満ち溢れ、
肩で息をしながら、腹の底からうなり声のようなものが聞こえてくる。
そして先生は、断末魔を上げながら包丁で首を深々と切り裂いた。
次の瞬間、久保寺先生の首からまるで別の生き物のように、
鮮血が凄まじい勢いでほとばしった。
文字通り血の雨が、スコールのように降り注ぐ。
風見君や猿田君は必死に腕で防ごうとしたが、
先ほど血が躰全体にかかって茫然自失の私は、
もはや避けようとする気力すら失われていた。
机に手をかけていた両腕の力も無くなり、ぶらーんと両腕を下がったまま、
私は大量の血をモロに浴びる羽目となったのである。
先生が床に倒れて血の海に沈み、誰かの悲鳴声が聞こえると、
後ろの方はドタドタと騒がしくなった。
私はと言うと、未だに目の前で起こったことを認識できず、動けないままだった、
ふと力が緩み、やっと逃げ出さなければと思った私は、
腰に力が入っていないのを無理して立ち上がろうとしたためか、
『ガッシャーン!』と大きな音をたてて、無様にも、床に転がり落ちた。
転んだ拍子に、正面を見上げると、
まだ座ったまま、ガクガク震えている風見君の姿があった。
あの様子じゃ、とてもこちらを見ている余裕はなさそうである。
運の悪いことに、教室にまだ残っていた人を助けていたクラスメイトは、
ちょうど皆、廊下へ連れて行くところだったので、
誰も私を助けられる状況ではなかった。
血だけではなく、先日の掃除で塗り替えたばかりの
ワックスとわたぼこりまみれになりながら、
わずかに残された最後の気力を振り絞った。
下半身を引きずるように、まるでアザラシの如く這いつくばりながら、
私はどうにか廊下に辿り着くことができた。
それまで藤巻さんを介抱していた恵ちゃんが私に気づき、
私を抱きしめたその瞬間、
私は全ての力を使い果たしたのか、意識が遠のいていくのを感じた。
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