過去ログ - 恒一「『ある年』の3年3組の追憶」
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6:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/08/06(月) 21:05:58.03 ID:4DOG5YTr0

面会時間が終わり、帰路についたその最中、
私たち三人は大切なことを忘れていたのに気がついた。

「しまった・・・、榊原君に『いないもの』の話をしていない!」

風見君の叫びに、私と赤沢さんは顔を見合わせる。
そして、赤沢さんの顔色が青ざめていくのが手に取るように分かった。

「私が・・・!対策係なのに、私がしっかりしていなかったから、こんなことに!」

「そんな!赤沢さんだけじゃないの。
三人もいて誰も気がつかなかったから、そんなに自分を責めないで」

私はそう言って、赤沢さんをなんとか落ち着かせようとした。
普段は気丈に振る舞っているが、一度崩れると脆いところがある。
それが赤沢さんの致命的な欠点でもあった。

「ありがと・・・それにごめんね・・・ゆかり・・・」

赤沢さんも少しずつ落ち着きを取り戻したようだ。
さっきは欠点と言ったが、こうした放っておけないところがあるから、
赤沢さんは口調が厳しくても、周りが見放さずに支えてくれてるのかもしれない。

「恒一くんが学校に来たら、今度こそきちっと話すわ。
だから、ゆかりも風見君も協力してね。
もちろん、多佳子や中尾にも話しておくから」

今日の反省を踏まえつつ、赤沢さんは一足先に帰って行った。
あとに残ったのは、私と風見君ただ二人。とても気まずい。

「桜木さん、その・・・。贈り物のチョイスがとても良かったよ。あのチューリップ」

「えっ・・・そんな、私なんて今回役に立てなかったし」

話を中心に進めたのは風見君と赤沢さんで、
私は二人の後ろからついて行くばかりだった。
なのに、風見君は

「そんなことないよ、桜木さん。これからもよろしくね。
今日はありがとう。一年間、いっしょに頑張ろう」

「は、はいっ・・・!」

恥ずかしさのあまり、声が裏返っていたかもしれない。
だけど、今日一日の緊張が瞬時にほぐれるくらいの、嬉しさも同時に感じた。
長くも短くも感じられそうなこの一年、彼とならどんな困難にも立ち向かえる。
そんな気がした、ある春の一日だった。


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