過去ログ - 恒一「『ある年』の3年3組の追憶」
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8:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/08/06(月) 21:07:08.98 ID:4DOG5YTr0
思い返せば一年半前。
家庭の事情で一つ屋根の上で暮らしていた、私の従兄の赤沢和馬。
幼い頃から、私が『おにぃ』と呼んで慕っていた彼は、
おととしの3年3組の対策係だった。
途中までは『いないもの』のおかげで、誰も死ぬことなく、無事に終わるかに見えた。
ところが、『いないもの』が孤独に耐えられず、
自分はここにいると言い出したことで、おまじないは解けてしまった。
おにぃは10月の初めに事故で命を落とし、
役目から逃げ出したことを恨むべき相手も、
正気を取り戻すことがないまま、年が明けてすぐに命を絶ってしまった。
まだ3組の事情を知らなかった私は、ただ嘆き悲しむことしかできなかった。
だが翌年度末に、3年3組に進級する際、
このクラスの忌まわしき呪いを知った、私は決意した。
「私が3年3組になったら、絶対にこの理不尽な災厄を止めてみせる!」
それが、おにぃへの供養であると同時に、
私を実の妹同然に可愛がってくれた、おにぃへの一番の恩返しになるのだ。
同時に、これは復讐ではないと自分の中に言い聞かせた。
憎しみに囚われてダークサイドに堕ちる、なんて映画が昔あったけど、
同じような過ちを味わいたくなかった。
私自身、物事がうまくいかなくなると、
イライラして怒りが露わになり、言葉が刺々しくなってしまう。
この性格でどれだけ損してきたも、充分なまでに分かっている。
だけど、今日もその自制ができなくなりそうである。
ゆかりに励まされた後、私は、
「恒一くんが学校に来たら、今度こそきちっと話すわ」
と大口を叩いてしまった。
にも関わらず、当の本人が「風邪が原因で来られません」という状態では、
ゆかりと風見くんに合わせる顔がない。
おまけに二人とも、携帯電話を持っていないので、
おそらくもう登校中であろう二人に伝える手段もない。
焦って苛立ちする中、最後の頼みの綱は多佳子だった。
多佳子は携帯電話を持っている。
私はだるい躰をなんとか起こしながら、子機から電話を掛けた。
「あっ、もしもし。泉美!躰は大丈夫なの!」
「多佳子!・・・ごめん、今日は学校に行けそうにない。
学校に着いたら、すぐゆかりと風見くんに、
クラスの事情を恒一くんに伝えるように連絡して!
病院の時より、説明するのが難しくなるのはわかってるけど・・・」
焦って、どうしても早口になってしまう。
「落ち着いて、泉美。わかった。後は私に任せて。
泉美はちゃんと養生するのよ、いい?」
登校中だったのか、電話が足早に切れた。
とりあえず、伝えられることは伝えた。
が、とても納得できることではない。
なぜ、お見舞いに行った時に、ちゃんと伝えられなかったのだろう?
今回の風邪のようなアクシデントにも備えて、
対策係たるもの、日頃から未然に防ぐ努力をするべきではなかったのか?
様々な悔いや心残りが改めて浮かび上がってくる。
「おにぃ・・・こんな私なんて、対策係として頑張ってきた
おにぃの名前に泥を塗るだけだよね・・・」
惨めな思いに囚われながら、私の目から涙がまたこぼれ落ちた。
ここなら誰にも自分の姿を晒すことがない。
私は泣くに任せて、ただただ泣きじゃくった。
そして泣き疲れたのか、次第に眠気が全身に広がっていく。
私は睡魔にも抗おうとしなかった。
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