過去ログ - 恒一「『ある年』の3年3組の追憶」
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92:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/08/06(月) 22:18:50.08 ID:4DOG5YTr0

思い出した。

私は眼帯をしていない、“両目の”見崎さんを見たことがある!
いや、それだけじゃない。その時、“眼帯をかけた”見崎さんも一緒にいた。
だから、見崎さんが不完全な復活をしたなんてあり得ない。
なぜそれに、もっと早く気がつかなかったのか?

そうこうしている間に、見崎さんたちを追うように川堀君と辻井君も通り過ぎ、
最後に有田さんと柿沼さんが、私たちの元へ駆け寄ってきた。
うずくまっている小椋さんに、このことを早く伝えなきゃ!

「あの・・・その・・・小椋さん・・・」

「なにっ!?」

私がまどろっこしいのに苛立ったのか、小椋さんがすごい剣幕で睨み付ける。
先ほどぶつかった衝撃からか、鼻から出た血がボタボタと床に滴り、
口元もよだれまみれで、ひどい有様になっている。

一方、その間にも見崎さんたちはある部屋に入ると、
誰も入れないように、鍵をかけてしまったようだ。
川堀君と辻井君が、無駄だと分かっていても「開けろ!」と言いながら、
ドアをこじ開けようと四苦八苦している。
すると、小椋さんが鼻血やよだれを拭おうとせず、
そのドアの方へ向かっていった。

「どけぇぇぇっっっ!!!」

なんとたった三発のキックで、小椋さんはドアを蹴破ってしまった。
あの小さな躰のどこに、そんな力が秘められているのだろう?
と、感心している場合ではない。
待って、違うの!見崎さんは・・・

自分の中で言いたいことは分かっていても、うまく言葉にできない。
そんなもどかしさを覚えるうちに、
小椋さん、川堀君、辻井君、渡辺さんが部屋へ入っていく。
残った私たちも後を追おうとしたその時、

「小椋ぁ!」

川堀君の野太い声が響き渡った。
一体に何事かと、私たちも部屋に入る。すると辻井君が、

「小椋さんが・・・窓から落ちた・・・」

有田さんの顔色が、一瞬にして蒼白になる。
すると、彼女は小椋さんが外へ落ちた窓へ向かい、下を覗き込んだ。

「そんな・・・」

有田さんは全身を震わせたか思うと、すぐさま部屋を飛び出していった。

「バカ!どこへ行くんだよ!」

川堀君の言葉にも応えず、有田さんは奥の階段を降りて行ってしまった。
と、後ろから見崎さんと榊原君が隣のドアから出て走り去っていく。

「廊下に出たぞ!」

再び川堀君と辻井君が、そして渡辺さんも見崎さんを追いかける。
ああダメだ、みんな勘違いしている。見崎さんじゃないのに・・・
勇気を振り絞り、私は大声で叫んだ。

「待って!」

皆が一斉に足を止め、こちらを振り向く。
視線が鋭くて恐い。でも、頑張って言わなきゃ。



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