過去ログ - 恒一「『ある年』の3年3組の追憶」
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91:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/08/06(月) 22:18:22.52 ID:4DOG5YTr0
◆No.23 Aki Matsui
私と杏ちゃんが、杉浦さんの館内放送を聞いたのは、
お手洗いを済ませて部屋に戻ろうとするところだった。
見崎さんを殺せば災厄は止まると言っていたけれど、
私はどこか腑に落ちなかった。
喉に小骨が刺さったような、妙な違和感を覚えたのだ。
一方、杏ちゃんは、
「くっ・・・まさか見崎さんが『死者』だったなんて・・・、
亜紀!わたしから離れるんじゃないよ!」
ああ、杏ちゃん、まさか真に受けちゃったの?
私を守ってくれるのは嬉しいけど、何かが違う。
張り詰めた表情の杏ちゃんが、少し怖く見えてしまった。
廊下に出ると、ちょうど渡辺さんが奥にある階段から向かってきた。
渡辺さんは、髪が雨で濡れており、少し息を切らしていた。
「ナベ、どこいってたのよ!」
「ちょっと前島が大変なことになって・・・」
「前島?なんでアイツが?」
「後で話すわ。それより今は・・・」
「そうね、『死者』を探さなくちゃ!」
渡辺さんは、私より杏ちゃんと古い馴染みの仲であるためか、
ツーカーで会話が通じ合うことがある。
私の知らない杏ちゃんのことを知っているのは、
素直に羨ましいし、少し嫉妬してしまう。
「いた、『死者』だ!」
廊下を曲がると、見崎さんと榊原君がこちらに向かって走ってくる。
ふと、少し奥の部屋から、人影が飛び出してきた。
私より小柄なあの子は・・・小椋さん?
「兄貴の仇ぃぃぃっっっ!!!」
必死に否定する榊原君にかまわず、カミソリを振り上げた小椋さんに対して、
「ごめん!」
榊原君がその言葉を言い終わるや否や、
小椋さんの小さな躰が、私たちのいる方向にはじき飛ばされた。
あ、危ない!
そう思ったその直後、よろけた小椋さんが杏ちゃんにぶつかる。
小椋さんが、お腹の底から絞り上げるような呻き声を上げているが、
私はその拍子に壁に激突した杏ちゃんを優先して抱き起こした。
「杏ちゃん、杏ちゃん!大丈夫?」
「キョウコ!おい、しっかりしろ!」
「つっ・・・わたしは平気よ。ありがと、亜紀」
そんな私たちを横目に、見崎さんと榊原君が走り去っていく。
小椋さんと同じようにとても小柄で、
眼帯とシャギーショートボブが特徴の見崎さん・・・
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