過去ログ - 恒一「『ある年』の3年3組の追憶」
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96:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/08/06(月) 22:22:10.59 ID:4DOG5YTr0

◆No.29  San Watanabe

「ちょうど良かった、前島を頼む!」

「どういうことだよ・・・っておい!」

夕食後、喉が渇いてたあたしは、
自販機で買ったコーラを一気に飲み干すと、自室へ戻ろうとした。
その時、上から突然、悲鳴声が聞こえた。
あたしがフロントへ向かうと、勅使河原が何かを抱えている。
その何かを見てあたしは驚きを隠せなかった。
背中が赤黒く染まっている。血が出てるじゃねぇか!

勅使河原から半ば押しつけられるように、
あたしは血を流してぐったりしている前島を外へ持ち運んだ。
なんでも管理人が殺されて、前島もそれに巻き込まれたらしい。
何だよそれ。あたしは信じられなかったけど、
勅使河原の狼狽ぶりと、前島の現状を見たら、そうも言ってられなかった。
外は雨が降っている。駐車場の前のロータリーは木陰になっており、
雨宿りできそうな場所に前島を寝かせた。

「前島、死ぬんじゃねぇぞ。後でちゃんと助けに来てやるからな!」

かすかに、前島が頷いたように見えた。
大丈夫、まだ息はある。死んではいない。
そうだ、さっきの悲鳴が気になった。
あたしの部屋には小椋が残っている。そっちは大丈夫か?
あたしは急ぎ足で合宿所に戻った。

「ったく・・・、意味わかんねぇよ」

思わず愚痴が出てしまう。
あたしは、元々この合宿に行きたいわけではなかった。

3組の関係者が次々に死んでいく中、
新担任の三神先生は突然、夏休みに合宿をすると言い出した。
なんでこんな時にするのか、ちっとも理解できなかった。
だいたいうちのクラスに降りかかった呪いが理不尽だった。
あたしは迷信なんて信じないけど、こればかりはどうしようもない。

「大体さ、あの転校生が見崎さんに話しかけたりしなかったら・・・」

そう言って、和江に不満をこぼしたこともあった。
このまま何もなければ、あたしはこの場にいなかっただろう。

ところが、引きこもりだった小椋の兄貴が死んだことで、
そうもいかなくなった。家にいても死ぬ時は死ぬ。
部屋の中で災厄に怯え続けるなんて、あたしはまっぴらゴメンだ。
あたしの周りのクラスメイトの中では、
まず、松子が一緒に参加することとなった。
和江は家族で旅行に出かけると行って不参加。
綾野の一件があるから、正直不安だ。
綾野で思い出したが、悠も合宿の参加を見送った。
親友だった綾野の死が相当堪えたらしい。仕方ないだろう。
そして、キョウコは松井と一緒に参加、
ナオはテニスの試合があるため、和江と同じく夜見山にはいないはずだ。

手には前島の血がべっとり付いている。
服に付いたものはどうしようもないが、洗面所で手を洗っていると、
杉浦の館内放送が聞こえた。
見崎が『死者』・・・?
確かに見崎はどこか胡散臭いところがある。
『いないもの』になる前から、クラスのみんなに馴染もうとせず、
どこか人間離れした感じがする。そんな奴だった。
でも、もし『死者』だったら・・・
あたしは急いで二階に駆け上がり、キョウコと合流した。



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