過去ログ - 恒一「『ある年』の3年3組の追憶」
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98:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/08/06(月) 22:23:06.18 ID:4DOG5YTr0
「川堀!ここはキョウコに任せておけ!
あいつは護身術とか色々やってるから、何かあっても大丈夫だ。
それより、あんたがいなくなったら、このドアを誰がどかすんだよ!」
辻井と柿沼には悪いけど、
もやしのように、ひ弱そうなあの二人はとても戦力にならない。
あたしも一応女だから、体力にだって限界がある。
川堀くらいしか、このドアをなんとかできるやつしかいないのが現状だった。
「しゃあねぇ・・・じゃあ、金木。頼んだぜ!」
「わかった。ナベ、それじゃ行ってくる」
川堀はまだ心残りがありそうだったが、しぶしぶ承知すると、
キョウコは私に軽く返事して、松井を連れたまま奥の階段へ向かった。
キョウコが視界から消えていくのを見届けたあたしは、
「さてと、このドアをなんとかしなければ・・・」
そう言い終わらないうちに、突如、地面が激しく揺れ動いた。
地震か!?
天井の照明の一部が崩れ落ちるなど、相当な揺れだった。
皆立っていられるのが精一杯である。
ふと、何かが焦げる臭いがした。
嫌な予感がする。
すると、今度は後ろから
耳をつんざくような凄まじい轟音が、廊下に響き渡った。
振り向く。火柱が噴き上がっていた。
さっきまでキョウコたちがいた場所だ。
まさか、あの炎に巻き込まれて・・・
違う、二人はもうとっくに一階に降りているはずだ。
「火事だ、逃げろ!」
辻井の裏返った声が合図になったのか、
あたしと辻井、柿沼、川堀の四人は急いでドアへ向かう。
後方はあんな火柱が上がった以上、迂闊に近づいたら丸焦げになってしまう。
あたしと川堀が渾身の力を込めて、ドアに体当たりする。
ドアは呆気なく開いた。思わず、フロント側へ転びそうになる。
さっきの衝撃で抵抗が和らいだのだろうか?
ふと、脇にソファーが置いてあるのが見えた。
そうか、これがバリケードになっていたのか。
あたしたちが、見崎を殺そうと追いかけから、
こんなもので塞がれていたなんて・・・
今更、そんなことを思い返す暇もない。
一刻も早く、外へ逃げなければ。
フロントは惨憺たる光景が広がっていた。
壁の装飾は剥げ、階段の手すりはところどころ崩れ落ち、
あちこちに火が回って、焦げ付いていない部分はどこにもない。
夕方ここを訪れた時の、古風な美しさをたたえていた面影は
どこにも見当たらなかった。
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