10: ◆7az9zC1iQs
2012/08/13(月) 00:01:11.28 ID:x3dEhYxzo
>>7
どうぞ
11: ◆1ImvWBFMVg[sage]
2012/08/13(月) 00:01:50.89 ID:w5RtmRbo0
じゃあ投下します。タイトルどうしよう。
マリアと 全七レス
12:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)[sage]
2012/08/13(月) 00:02:21.89 ID:tuKYVoTuo
では、◆1ImvWBFMVg さんから
◆7az9zC1iQs
ID:jt57Ksiv0さん?
◆rmqyubQICI
13:マリアと 1/7 ◆1ImvWBFMVg[sage]
2012/08/13(月) 00:03:36.77 ID:w5RtmRbo0
もしこの世に女神が存在したとして、はたしてそれは本当に人の形をしているのだろうか。
女神というものを語るとき、美とは何か、次にはそんな命題が頭をもたげてくるかもしれない。
世の中には美しいものと醜いものがある。これは歴然とした事実だ。例えばいつまでも眺めていたくなるような美しい景色があり、また逆に、目を覆いたくなるような醜悪な吹き溜まりがある。
もちろん美しい顔や、醜い顔もある。ではその違いとは何なのか。
14:マリアと 2/7 ◆1ImvWBFMVg[sage]
2012/08/13(月) 00:04:49.58 ID:w5RtmRbo0
だが修道院だって人の集まりであり、必要のないものは自然と疎まれていく。
そんな風にして、しばらくして自分は何処ともしれない片田舎の教会に送られていた。
その教会は今にもつぶれそうな建物だった。本堂には幾重にも蔦が絡まり、塗装は剥げ、まるでみすぼらしさを絵に描いたような様相を呈していた。
そこでは別棟にひとりで暮らす神父が、唯一の住居人だった。
15:マリアと 3/7 ◆1ImvWBFMVg[sage]
2012/08/13(月) 00:06:34.85 ID:w5RtmRbo0
午前中のうちに掃除を終わらせると、日中はそのほかにやることはほとんどなかった。別棟の家畜小屋で飼っていた山羊を放牧させるくらいだろうか。
山羊は大人しく、放っておいても遠くに行くことはなかった。教会の近くの草原で寝転がり、空を見上げながら時間を過ごした。なにもなかった。吹き抜ける風と暖かい日差しと、空だけが、目の前一面に広がっていた。
よく朝方の拭き掃除の興奮を思い出してしまい、そのまま手淫にふけることもあった。だがあまり上手くはいかなかった。マリア像の硬く冷たい感触を思い描いているのに、実際に触れているのは柔らかく生暖かい自分の肌で、それが興奮を萎えさせていた。
暑い日は、山羊を川べりに連れて行き水浴びした。水をかけてやると山羊も喜んでいるようだった。持っていた手ふきで体を洗ってやる。山羊の体は硬く締まり、掛けられた水で冷やされていた。
16:マリアと 5/7 ◆1ImvWBFMVg[sage]
2012/08/13(月) 00:07:39.78 ID:w5RtmRbo0
持たない。その日告白は行われなかった。
まるで判で押されたように同じ毎日が続くなか、ただ季節だけが通り過ぎていった。
あれだけ熱中した山羊との交尾もそのうち慣れきってしまい、手淫と変わらない味気ない物に成り下がっていた。余程の欲求不満でもない限りやらなくなっていた。
聖書の方は一先ず全編を読み終わり、二回目の読み込みに入っていた。もちろん以前としてさっぱりよく分からないままで、ただ字だけを追っているだけであった。
17:マリアと 5/7 ◆1ImvWBFMVg[sage]
2012/08/13(月) 00:09:34.38 ID:w5RtmRbo0
一瞬山羊が人の言葉を喋ったのかと思い、心臓が口から飛び出そうになった。もちろん違った、たぶん酪農家の家族の一人なのだろう。
「小さいのに修道服なんか着て…あぁそう、あなたがあの例の男の子なの」
おそらく神父から色々と聞いているのだろう。その妙齢の女性は、こちらを興味深そうに眺めて確認している。
やはり落ち着いた雰囲気に、どこか山羊を思わせる面影を持っていた。そのため、目を合わせることが出来なかった。周りが暗いためよくは見えないが、どうやら綺麗な女性のようだ。神父以外の人間と触れ合うのは久しぶりで、どう対処していいか分からなかった。
「山羊に会いに来てくれたのかな。でもごめんね、報告遅れたけど、もうあの山羊は人に貰われて行っちゃったの」
18:マリアと 6/7 ◆1ImvWBFMVg[sage]
2012/08/13(月) 00:10:49.45 ID:w5RtmRbo0
でも最後までやるのを我慢して、その日はそこで帰ることにした。彼女はなにも言わなかった。
教会の講堂で神父が山羊に会いに行ったかどうか尋ねてきた。
「どうでした。山羊は元気にしていましたか」
その質問には答えず、手に持っていた聖書の中の『娘』という一文字を指差して突き出した。すると神父はしばらく眉をひそめてから、合点がいったように手を打った。
19:マリアと 7/7 ◆1ImvWBFMVg[sage]
2012/08/13(月) 00:11:36.56 ID:w5RtmRbo0
はいわくというか、理由があるんですよ」
神父は思い出したように付け加えた。彼女とマリア像が似ている原因があるとは一体どいうことだ。
「あのマリア像はね、彼女の先祖代々に受け継がれてきたの品物なんですよ。教会に元からあった物ではなくてね。元々は聖母マリア像というよりは、美しい娘をモデルに模った嗜好品です。それを教会に寄附して頂いたのが数十年前だとか」
急にすべてが色あせてしまった。教会のマリア像も、酪農家の娘も。あの地主とのことだってどうでも良くなった。
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