過去ログ - ビッチ
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961:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/02/11(月) 23:23:32.07 ID:ER1rVJ59o

 鈴木先輩との思いがけない再会は、麻季が奈緒人を保健所の三ヶ月健診に連れて行った
帰り道のことだった。とりあえず周囲のママたちと違って、特に仲の良いママ友なんてい
ない麻季は、奈緒人を乗せたベビーカーを押して帰宅しようとしていた。途中の駅の段差
でベビーカーを持て余していたとき、一人の男性が黙ってベビーカーに手を差し伸べて持
ち上げてくれた。お礼を言おうとその男性の顔を見た瞬間、麻季は思わず凍りついた。黙
って手助けしてくれた男性は鈴木先輩だった。同時に彼の方も麻季に気が付いたようだっ
た。

「あれ、もしかして夏目さん?」

「・・・・・・鈴木先輩」

 二人はしばらく呆然としたようにお互いの顔を見詰め合っていた。

 すぐに先輩は気を取り直したように笑顔で懐かしそうに麻季にあいさつした。

「久し振りじゃん。元気だった?」

「うん」

「そういや結城と結婚したんだってね。夏目さんじゃなくて結城さんか」

「先輩は・・・・・・」

 怜菜と結婚したんですよねと麻季は言うつもりだったけど、先輩はそれを質問だと取り
違えたようだった。

「俺? 俺は相変わらず寂しい一人身だよ。同情してくれる?」

 先輩は麻季の言葉を自分への質問だと間違えたのだった。そして自分の結婚を彼女がま
だ知らないものだと思ったらしい。実際、偶然に多田先輩から聞かなかったら麻季は怜菜
と先輩の結婚のことなんか知る由もなかったろう。それで先輩は自分が結婚していないと
麻季に言い出したのだ。

 いったい先輩は何を考えてそういう嘘を彼女に言ったのだろう。

「夏目さん、じゃなくて結城さん。これから少し時間ない? 久し振りで懐かしいしちょ
っとだけ話しようよ」

 当然、麻季にはそんな気は全くなかった。けれどこのとき再び久し振りのあの声が頭な
の中で響いたのだ。



『いいチャンスじゃん。この際、鈴木先輩と怜菜のことを少し探っておきなよ。それにど
うして鈴木先輩が怜菜との結婚を隠しているのかも気になるでしょ』



 麻季は好奇心からその声に従うことにした。

「そこのファミレスでお茶でもしようか」

「・・・・・・少しだけなら」

 鈴木先輩は学生時代より少し大人びていて、服装も落ちついた感じで格好よくなってい
た。

 麻季は奈緒人が寝入っているままのベビーカーを押して先輩とファミレスに入った。フ
ァミレスの店員は先輩と麻季のことをきっとまだ幼い子どもを連れた若夫婦だと思っただ
ろう。


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