過去ログ - える「折木さんも…ご経験がおありなんですか?」奉太郎「」
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31:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage]
2012/09/16(日) 05:32:50.80 ID:2r6A/1tO0
「もう一人の折木さんについて知りたいんです!」
 いきなり千反田が割って入ってきた。相変わらず言葉足らずな説明だ。案の定、里志は全く要領を得ない顔をしていた。
「もう一人のホータロー? ドッペルゲンガーでも見たのかい?」
「どっぺるげんがー?」
 千反田が頭の上に疑問符を浮かべて首を傾げた。
以下略



32:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage]
2012/09/16(日) 05:35:49.63 ID:2r6A/1tO0
「なんだか、怖い現象ですね……」
「ああ、怖い。もう一人ホータローがいるなんて、想像しただけで恐ろしいよ」
 失礼な奴だな。
「折木さんがもう一人……」
 千反田が天井を見上げて何やら想像し始め、突然ふふっと噴き出した。……何を想像したんだか。
以下略



33:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage]
2012/09/16(日) 05:38:21.75 ID:2r6A/1tO0
「ところで千反田」
「はい?」
「さっき何を想像したんだ」
 訊くと、千反田は両手をわたわたと胸の辺りで振った。
「い、いえ、その、折木さんが二人いるのをイメージしたら、私の疑問に答えるのを押し付けあっているお二人の折木さんが思うい浮かんだもので」
以下略



34:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage]
2012/09/16(日) 05:39:36.81 ID:2r6A/1tO0
「やあ、お待たせ」
 そうこうしている内に里志が戻ってくる。
「どうだった?」
「うん、わかったよ。生物準備室は元古典部の部室だったんだよね。で、新しい部員が一昨年も去年も入っていないっていうんで、特別棟四階に移動させられたらしい」
「ああ、それは想像がつく」
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35:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage]
2012/09/16(日) 05:40:44.08 ID:2r6A/1tO0
 ――ビンゴだ。
「誰だ?」
「遠垣内先輩さ。壁新聞部元部長の。理由まではわからないけど、あまりにも熱心だから、総務委員会も教師も根負けして移動を認めたらしい」
「わかった。わざわざすまなかったな」
「いいよ。あと一時間くらいで古典部に顔出すから」
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36:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage]
2012/09/16(日) 05:41:36.64 ID:2r6A/1tO0
 ◇ ◇ ◇ 

 地学準備室に帰ってきた俺は、お茶を淹れ一息ついていた。
 なんてことだ、と俺は天井を見上げて、今頃空港に立っているだろう、もう一人の折木の姿を思い浮かべた。
 そうだ、遠慮、懐かしみ、この二つの感情は、どうしたって俺には向けられるものではない。
以下略



37:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage]
2012/09/16(日) 05:43:23.42 ID:2r6A/1tO0
「会議室に行く前、部室で、お前が答を出していたんだ」
「ほっ、本当ですか!? どこでしょう、珍しい苗字ですか?」
 いや、そこは絶対関係しないだろう……。
「本当なら、俺がまず考え付かなきゃならん可能性を、あまりにも近くにいたせいで見逃してたんだ。灯台下暗し、って奴さ」
「あの、要領を得ないんですが……」
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38:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage]
2012/09/16(日) 05:44:33.59 ID:2r6A/1tO0
「千反田、俺に姉貴がいるのは知っているよな」
「はい、確か、供恵さん、でしたよね」
 流石だ、記憶力がいい。
「姉貴は二年前にここを卒業した」
「ええ、去年折木さんから聞きました」
以下略



39:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage]
2012/09/16(日) 05:46:02.27 ID:2r6A/1tO0
 千反田は口を小さく開け、何度か瞬きを繰り返した。
「あの表情は、折木さんのお姉さんを思い出していたから……?」
「ああ、そうだと思う」
「でも、お二人は学年も部活動も違いますし、どういった経緯でお知り合いになったなのでしょう? どういう関係だったのでしょう?」
 それについても、俺はある程度の想像がついていた。だが、それを語るのは非常に恥ずかしい。なにぶん、身内のことなのだ。姉貴め、卒業した後も遺恨を残しやがって。
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40:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage]
2012/09/16(日) 05:47:03.08 ID:2r6A/1tO0
「千反田、最初に話した、薬品金庫の話は覚えているな」
「は、はい、他人に見られたくないものを隠していたからだ、と」
「俺は、とんだ思い違いをしていたらしい。遠垣内が他人に見られたくなかったものが、俺が想像していたものとは別物だったんだ」
「それは、つまり……どういうことでしょう?」
「正確には、俺が薬品金庫に隠してあると確信していた物……紛らわしいから、『A』としよう。『A』も、確かに見られてはまずいものだった」


41:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage]
2012/09/16(日) 05:48:38.70 ID:2r6A/1tO0
 千反田はこくりと頷いた。先ほどまで下がっていた彼女の肩が、天井から引っ張り上げられたように上向いている。
「だが、『A』よりもっと見られたくない――他人に触れられたくないもの、『B』があった。それが、きっと薬品金庫に入っていたんだ」
「その、『B』というのは?」
「そこに入る前段階として、俺が疑問に思ったのは、何で薬品金庫なんかを、わざわざテーブルの下に隠していたか、ということなんだ」
 そう、段ボールを積み上げた簡易テーブルの下に置かれていただろう、薬品金庫。もし煙草とライター……あとは灰皿に類似したものか、それらをとっさに隠すのなら、いちいち手間がかかる場所に俺だったら設置しない。それこそ、鞄の中に放り込めば済む。いくら臭いがするからといって、そこまで追及するとは考えにくい。
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