3:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[saga]
2012/11/06(火) 23:52:20.01 ID:7OKftRVp0
それに、別に幾ら怪我を負っても支障はないのだ。
私は死から断絶した存在なのだから。
私の顔の傍を炎槍が通り抜けていったことで、横筋へと逸れていた思考が現状の認識へと回帰する。
即ち追手から逃げる現在の状況へと。
追手の数は六十ほど。屈強で野蛮な男たちだ。
男たちは荒い声を発する指揮官に従っている。
おそらく彼らの大多数は傭兵だろう。
中には呪術使いも含まれているらしいから、かなり信用されている者たちだ。
呪術は、他国に漏洩しないように厳重な管理下に置かれているはずだからだ。
呪術使いを動員するとは、どうやら彼等の雇い主――おそらく王、または次ぐ有力貴族――は、本格的に私を捕縛するつもりらしい。
しかしこの調子ならば逃走に成功するだろうと私は分析する。
もう既に耳長共の領土に入ったのだ。
エルフたちの主張ではこの森から既に彼等の領土の域内だ。
そして人間側は、その主張を毅然と撥ね退けるだけの権力も暴力も保有していないのだ。
そのためこの近辺には、おそらくエルフたちによる警備が行われていると考えられる。
それでも追手たちは、尚も執念深く私に迫ってくる。
彼等――背後の男たちと彼等の雇い主――は余程私を欲しているらしい。
正確には、私に宿る禁呪を。
戦争が近いのだろうか。火種は至る所に蒔かれている。
もしくは、特に差し迫った理由は無いのかもしれない。
私の身に宿る呪術は、それだけで大国の戦力に相当する威力を有する。
まさしく戦う為――殺す為だけの呪術だなのだから。
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