3:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[saga]
2012/11/18(日) 22:45:14.98 ID:FygFt39p0
燦然と輝く夕日に目を細めながら、菊地真は持っていたペットボトルの水を口に流し込んだ。
遠くを山々が折り重なるように続き、その下に広がる田畑が日の光に照らされている。
都会では見られない田舎ならではの美しい光景に、真は思わずため息を漏らした。
765プロ所属のアイドルである真はドラマの撮影のために群馬県まで訪れていた。
今日中に予定されていた撮影は無事に終わり、今は夕日を眺めながらスタッフ用のテントに設置されているパイプ椅子に座って一息ついている。
そんな真の周りでは、大勢のスタッフが慌ただしく撮影機材などの撤収をしていた。
「真さん、出発しますよー」
遠くから掛けられたスタッフの呼び声に、真は息を吐いて、パイプ椅子から立ち上がった。
「はーい、今行きまーす」
片付けを進めるスタッフ達にすれ違いざまに挨拶をしながら、ワゴンへの歩みを進める。重い機材を運んでいるスタッフ達は「お疲れ様でした」という返事をして真を送り出してくれた。
疲労によって頭が重い。真は歩きながらなんとなしに地面を見た。
雑草が所々生えた砂利道に自分の長い影が落ちている。
スタッフを避けつつ歩きながら、頭をもたげて自分の影を足から頭まで目で追っていく。
頭まで視線が行ったところで視界の端に並んで駐車されている乗用車やトラックの姿が映った。
顔を上げて、駐車されている車の中から白いワゴン車を見つけた。
ロケのために真が乗ってきたワゴン車だ。
いつもは担当のプロデューサーと共に現場への行き来を共にしているのだが、この日は別件で別の仕事場に行っている。
ワゴン車に歩み寄ると運転席の開いた窓から、運転手が顔を覗かせて「お疲れ様でしたー」と笑顔を向けてきた。
真も「お疲れ様です」と会釈をして、スライド式のドアに手をかける。
ドアを開けると、後部座席には既にオレンジ色の髪をした少女が座っていた。
少女はワゴンに乗り込んだ真を見た途端、眩いばかりの笑顔を咲かせた。
「真さんお疲れ様でしたー」
「あぁやよい、お疲れ様」
真と同じ事務所に所属する中学生アイドル、高槻やよい。
真はドアを閉めて、ニコニコと笑うやよいの隣の座席に腰を下ろし、背もたれに身を沈めた。
「ふーっ、疲れたなぁ」
「今日の撮影は大変でしたもんねー」
どこか舌っ足らずなやよいの言葉を聞き、真は「ああ、そうだね」と返した。
撮影しているドラマは、アクション要素満載な内容のものだった。体力や身体能力が優れ、格闘技もたしなんでいた真は撮影のたびに戦わされ、そのたびにヘトヘトになる。
およそただのアイドルのする事とは思えないアクションの数々を思い出し、深いため息を吐きながら真はうなだれた。
385Res/401.31 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。