381: ◆guueZER6fU[saga]
2013/12/21(土) 15:05:13.94 ID:rjIC/uYV0
呆然と立ち竦んでいると、背後からか細い声で呼ばれた。
振り返ると、空中に胸元辺りまで出現しているみりあが、こちらを心底不安げな目をして見ている。
「みりあちゃん!」
自身も感じていた心細さから、卯月もみりあの元に駆け寄った。
「……なんだか、嘘みたい」
みりあは書き出されて行く自分の足先を見つめながら、呟いた。
「私も、そう思うよ」
無論、卯月も同じ気持ちだ。
これは夢なんじゃないか、そう思えてならない。
だが、この夜の涼しげな空気、東京湾から吹いているのであろう強い風。
卯月の感覚器を刺激するそれら全てが、これが紛れも無い現実である事を示していた。
「ばうっ」
犬の鳴き声。
見ると、あのセントバナード犬も自分達の近くに転送されてきている。
「あっ、わんちゃん!」
犬は、転送が終わるのも待たずに、まだ現れていない足をパタパタと動かして、みりあと卯月の元に駆け寄ってきた。
尻尾を振ってみりあに撫でられている犬の姿は、卯月の不安を溶かしていく。
この状況の中で、この犬は唯一の癒しだ。
どうやら最後に転送されてきたのがこの犬らしい。
周りにいる人々の顔ぶれを見る限り、これで部屋から全員の転送が済んだようだ。
「……あ、真さん達は?」
犬を撫で回しながらみりあが呟いた。
言われて「そういえば」と周りを見回すと、真とやよい、それに祐喜達六人はららぽーとの前に集まっていた。
何か話し合っているようだ。
「あそこにいますね。……何話してるんだろう」
「何か、打ち合わせとかかな?」
「その、みっしょん、のですか?」
「かな?わかんないけど」
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