20:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga sage]
2012/12/02(日) 01:17:07.89 ID:FjbuSJkDO
〜 十分後・館のロビー 〜
少女と執事、そして着替え終わった面々はロビーにて一堂に会していた。
吸血「しかし長旅じゃったなぁ。それで、ここは大陸南部のどの辺りじゃ?」
真っ先に口を開いたのは吸血鬼。
随所にポケットの縫い付けられた長袖長ズボンの厚手の作業衣という、機能性のみをひたすらに追求した女の子らしからぬ格好に、申し訳程度に吸血鬼の主張として裏地に赤を配した黒いマントを纏っている。
吸血鬼はよくブラシのきいたマントを内側から右手で顔まで上げて、持ち上がったマントを手持ち無沙汰にゆらゆらと揺らしながら執事へと訊ねてくる。
執事はそれにかぶりを振って答えた。
執事「いえ、ここは大陸南部ではありません」
吸血「なんと?」
吸血鬼が軽く驚いたように目を丸くする。
すると、すぐにそこへ横から声が割り込んできた。
宝箱「あぁ? ならここはドコ何だよ?」
幽霊「容姿の目立つ私たちを起こしたってことは、ここで移動も終わりかと思ったのだけれど」
相変わらず中身の見えないミミック。
そして直立する全身鎧の頭頂部にちょこんと腰を掛けた、純白の着物を纏った半透明のゴーストが続けて疑問を口にする。
執事「ここはまだまだ大陸の北部です。目的地までは早くても1ヶ月は掛かります」
宝箱「おいおい、じゃあ何でアタシらを……って、まさか!?」
執事「はい。お嬢様は大陸南部に向かうのを止めて、ここら一帯の領主となりました。
今は亡き御母君の力に頼る事無く、自らの足で覇道の一歩を踏み出す事を決意したのです」
幽霊「そ、それは……立派だけれど……」
宝箱「後ろ楯が無いのはヤバくないか? 外者はすぐに潰されるぞ?」
出る杭は叩かれるというように、とかく新参者には世間の風当たりが強い。
商売敵が新たに現れたのならばそれを排除しようとするのは当然の反応であるが、それに加えて少女たちはもう一つの大きなリスクを背負っていた。
吸血「魔族とバレたら、ちと厄介じゃしなぁ……」
休戦状態とはいえ、人間の魔族に対する感情は決して良くはない。
「悪魔の群れが廃墟にいる!」という通報を受けた精鋭騎士団数百騎が討伐に駆け付けたら「実はただの彫像でしたテヘ」という笑い話があるが、少女たちからしたら「問答無用で殺る気まんまんだな!?」と、とても笑える話ではない。
地上においてマイノリティである魔族は、非常に肩身が狭いのだ。
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