67: ◆QkRJTXcpFI[saga]
2012/11/30(金) 21:04:01.59 ID:nlsr789Z0
少年が涙が流したと同時に"蜃気楼"が見上げる空も涙を流す。
ぽつりと"蜃気楼"に落ちた雫はほんのりと胸に染み入った。
「君の心は本当に豊かになった。君にも魅せてあげたィよ。
綺麗で、壮大で、鮮やかで、明るくて……。
68: ◆QkRJTXcpFI[saga]
2012/11/30(金) 21:05:11.97 ID:nlsr789Z0
朗らかな狐の嫁入りが弾力のある小粒となり、降られれば桜や花に落ちて跳ねる。
「……どういう、ことだ?」
心理世界で"蜃気楼"は首を傾げた。
69: ◆QkRJTXcpFI[saga]
2012/11/30(金) 21:05:54.26 ID:nlsr789Z0
"蜃気楼"を乗せた桜は早すぎず遅すぎずの速度で静かに上空へ向かう。
少年「全部シンがくれたんだ。喜怒哀楽だけじゃなくて、愛も友も情も全部。
シンと出会わなかったら、今の僕はいないんだよ……」
70: ◆QkRJTXcpFI[saga]
2012/11/30(金) 21:07:55.50 ID:nlsr789Z0
ずっと、孤独だった。
ずっと、寂しかった。
発現してからとィうもの、自分が誰だか解らない不安と恐怖は付き纏ってィた。
その気になれば姿を表すこともできるが、言語の通じる人類に俺の姿は刺激が強すぎるらしィ。
71: ◆QkRJTXcpFI[saga]
2012/11/30(金) 21:08:31.46 ID:nlsr789Z0
少年「きっと、きっとね――これも一つの愛の形だと思うんだよ。
だから僕だってそうさ。僕も……君を愛してる」
"蜃気楼"の視界いっぱいに広がる少年の心。
いつまでも消えなかった愛の心。
72: ◆QkRJTXcpFI[saga]
2012/11/30(金) 21:09:03.11 ID:nlsr789Z0
「少年……ありがとう。俺は初めて愛を得た……喰らうことなく、愛を得た」
少年「だから食べてもいいんだよ。そんなシンにだから、食べてほしいんだよ」
「ィや……どうやらその必要はなさそうだな」
73: ◆QkRJTXcpFI[saga]
2012/11/30(金) 21:09:59.02 ID:nlsr789Z0
「少年、悲しむな。状況は変わったのだ。これはきっと、運命だったのだろう」
少年「運命なんて! そんなもの!」
「少年! さっきまでとは違う。諦めじゃなィんだ。
74: ◆QkRJTXcpFI[saga]
2012/11/30(金) 21:10:26.44 ID:nlsr789Z0
「俺は君に多くの言葉を残すことができた」
「だから問題なィ。そうだろう? 俺達は良き友になることができた」
「このような展開は想像すらできなかったな」
75: ◆QkRJTXcpFI[saga]
2012/11/30(金) 21:11:21.22 ID:nlsr789Z0
「さあ、笑え! 笑うのだ! 友の旅立ちは、笑顔で見送るものだぞ!」
少年「シ……ン……っ」ポロポロ
悲しみで顔がしわくちゃになりながらも、少年は必死で頬を持ち上げた。
76: ◆QkRJTXcpFI[saga]
2012/11/30(金) 21:12:09.10 ID:nlsr789Z0
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