過去ログ - 【オリジナル】魔導機人戦姫 第34話〜【なのかもしれない】
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15:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga sage]
2012/12/03(月) 20:17:05.47 ID:uc/YTnbAo
クリス「誰!?」

音と共に感じた魔力に、クリスは驚きと共に振り返って身構える。

直後、彼女の目は見開かれた。

金属そのままの鈍色の空間に、白い絵の具を垂らしたかのような綺麗な一点。

運命の悪戯か、求めた故の当然の解か、
そこには自分が会いたいと思っていた少年の姿があった。

九日前に見かけた時とも、四日前に出逢った時とも違う、
あの電波ジャックに映っていた時の魔導装甲とも違う、白灰色のインナースーツを着ている。

髪や目、肌の色も相まって相変わらず真っ白な姿をしていた。

ナナシ「……また君か」

クリスの探していた少年――ナナシは、僅かに呆れを含んだ声音で漏らす。

彼自身、幾度もクリスと遭遇している自覚はあったようだ。

ナナシはそのまま進み出て、広い部屋の中央に立つ。

クリス「あ……あの!」

クリスは戸惑い気味に口を開きかけて、押し黙る。

何と言えばいいのだろう?

助けてくれてありがとう……
は、敵である彼に対して相応しくないかもしれない。

そう、彼は敵だったのだ。

ナナシ「カナデ様…………申し訳ありません、緊急事態です。
    はい、敵が侵入しました。……一人です」

しかし、そんなクリスの戸惑いを余所に、ナナシは冷静に通信回線を開く。

どうやら、この状況下でも彼らの通信システムは使用可能なようだった。

ナナシ「はい……07の防衛領域です。
    はい、反応は既にありません……敵に撃破されたようです。
    他の弟妹達やナハトも既に戦闘状況にあるようです。
    ……はい、ヴァイオレットネーベルのデータ収集は完了しています」

距離が離れているせいか、向こう側の声はクリスまでは届いていない。

ただ、その通信の相手が義母・奏と同じ姿をした少女――
カナデである事だけは、クリスにも分かった。

ナナシ「……畏まりました。
    こちらの音声と映像をそちらのスクリーンに出します。

    壁面のカメラ映像でよろしいでしょうか?」

そんなやり取りの後、ナナシは再びクリスに向き直る。

以前のように姿を消すような素振りもなく、
ただ微動だにせず何かを待っているようだった。

僅かに張り詰めた緊迫感の中、クリスは再び思案する。

先程の続きになるが、一番の疑問であった“どうして助けてくれたか”と言う事も、
いざ口にしようとすると場違いな気がしてしまう。

だが、それと同時に妙な疑問も首をもたげる。

そもそも、彼は敵と言っていいのだろうか?

機人魔導兵達は有無を言わさずに襲い掛かって来るし、
アメリカでの戦闘も、幹部格の機人魔導兵達やカナデは問答無用と言う有様だった。

まともに言葉を交わした事はなかったが、
他の敵達と比べれば、彼は少なくとも話の通じない相手ではないような気がする。

それにもしかしたら、彼はグンナーに連れ攫われた“被害者”なのかもしれない。

そんな可能性すら脳裏を過ぎる。


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